電力小売り大手の事業統合、競争市場局が承認

(英国)

ロンドン発

2018年10月17日

英国競争市場局(CMA)は10月10日、電力大手SSEの小売部門とドイツ再生可能エネルギーのイノジーの英子会社エヌパワーの事業統合を承認することを発表した。SSEとエヌパワーはそれぞれ、電力やガスの小売事業で国内シェアを合計で8割近くを持つ6大事業者の一角で、2018年2月にSSEとイノジーが事業統合の意向を発表していた。

事業統合については、両社がともに大手事業者であることから、小売市場の競争を減殺する可能性があるとして、CMAが発表直後から審査を開始した。第1次審査(フェーズ1)では、競争環境の減殺とそれに伴う価格上昇の可能性を認め、かつ、この判断に対し両社から対応策が示されなかったことから統合を承認せず、第2次審査(フェーズ2)として、より詳細に寡占の影響を審査することとなった。これらは英国の2002年企業法(The Enterprise Act2002)に基づく手続きで、フェーズ2においてもCMAが実質的な競争減殺となる蓋然(がいぜん)性が高いと判断した場合には、事業統合禁止などの措置が取られる可能性があった。

フェーズ2では、統合により、消費者が契約開始時に特定の契約を選択しない場合に適用される標準変動料金(SVT)と、それ以外の料金メニューがどのように影響を受けるかが調査された。SVT契約者は、大手事業者と契約しているケースが多く流動性が低いことから、ある大手事業者が料金を引き上げた場合、別の大手という限られた選択肢の中から事業者を選んで契約を移す傾向がある。統合によって契約を移す先の選択肢がなくなる点が危惧されたが、CMAは、そもそもSSEとエヌパワーはSVTにおける競争関係に当たらないため、統合が消費者の契約先の選択肢を狭めることはなく、よって料金引き上げのインセンティブにはならないとした。また、それ以外の料金メニューを選択する消費者は、両社に限らずより広範囲の事業者から割安な料金メニューを選択すると考えられ、やはり影響はないとして両社の事業統合を承認した。両社の事業統合が完了すると、2018年第1四半期(1~3月)の小売りシェアベースで、電力1位(シェア23%)、ガス2位(19%)の事業者が誕生することになる。

(木下裕之)

(英国)

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