欧州委、1周年迎えたカナダとのCETAの経済効果を総括

(EU、カナダ)

ブリュッセル発

2018年09月25日

EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)は9月21日、暫定適用開始(2017年9月21日記事参照)から1周年を迎えた。欧州委員会は、これに先立つ9月20日、CETAがEU側の輸出産業にもたらした主な経済効果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。工業製品、農林水産・食品など、関税撤廃に伴い幅広い品目でカナダ向け輸出が拡大したとしている。

関税撤廃でカナダ向け輸出が拡大

欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は、暫定適用開始以降の1年を振り返り、「これまでの進捗には満足している」と語った。この背景には、欧州委が集計した2017年10月~2018年6月の9カ月間のEUのカナダ向け輸出が前年同期比で7%以上伸長したことがあるとしている。個別品目の輸出状況をみても、工業製品では、全体の約5分の1を占める機械類が8%以上伸びたほか、全体の1割を占める医薬品が10%増、家具が10%増、香水・化粧品が11%増、衣類が11%増、履物が8%と、EU側の主要品目で顕著な輸出拡大が確認されたとしている。

また、農林水産・食品でも、チョコレートの34%増、果物・ナッツ類の29%増、スパークリング・ワインの11%増、ウイスキーの5%増など、EU側の大幅な輸出拡大が記録されたと指摘した。

マルムストロム委員は、EUとカナダは開かれた、ルールに基づく国際通商秩序を支持する側に立ち、CETAはその証左だとの見解を明らかにした。

このほか、欧州委はCETAの経済効果分析を国単位、企業単位でもサンプル事例を挙げて行い、イタリアの「プロシュート」〔燻製(くんせい)していない生ハム〕大手のサン・ダニエーレ(同地域の生産者31社による共同事業体)がカナダ向け輸出を35%も拡大させたことや、カナダのオンタリオに1号店を設置したベルギー(フランダース地域)のチョコレート大手のスメット・ショコラトリが、15%の関税撤廃により約2割もカナダへの輸出を伸ばした事例などを紹介している。

なお、マルムストロム委員は9月26~27日にカナダを訪問し、ジェームズ・ゴードン・カー国際貿易多様化相と会談するほか、CETAの実施状況や課題について議論する合同委員会に出席する予定だ。

(前田篤穂)

(EU、カナダ)

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