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CETA、9月21日から暫定適用を開始-EUへの関税削減効果は年5億9,000万ユーロと試算-

(EU、カナダ)

ブリュッセル発

2017年09月21日

欧州委員会はEUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)の暫定適用の開始(9月21日)に伴い、タリフライン(関税品目)ベースで98%の商品に対する関税が撤廃され、EU産業界にとってはカナダの関税削減により、年間で5億9,000万ユーロの節約効果があるとの試算を示した。また、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は「世界貿易のルールを形作る基盤になり得る」と期待感を表明。CETAでは国家と投資家間の紛争解決手続きとして、新たな「投資裁判所制度(ICS)」の導入を進める点などで注目される。CETAはEUがG7参加国と結ぶ初めてのFTAとなる。なお、同協定の正式発効には、EU28カ国での批准手続き完了が必要となっている。

世界の通商ルール形成の基盤にもなり得ると表明

欧州委は9月20日、翌21日からCETAの暫定適用を開始すると発表した。暫定適用開始と同時に98%(タリフライン・ベース)の商品に対する関税が撤廃される見通しで、欧州委の試算によると、EU産業界にとってのカナダの関税削減効果は年間で5億9,000万ユーロに達するとしている。また、欧州委は「EU企業はカナダ国内の政府調達で、連邦レベルだけでなく州政府や自治体レベルの入札にも参入できるようになる」とCETAの効果を強調している。

EUとカナダは2016年10月30日にCETAに調印、カナダ政府は2017年5月16日に批准している。しかし、同協定の正式発効のためには、今後、EU28カ国での批准手続き完了が必要となる。

欧州委のユンケル委員長は「CETAはEUの通商政策の在るべき姿を凝縮したもので、欧州企業やEU市民を支える経済成長に貢献する。それと同時に、EU理念を反映し、グローバリズムの機会を活用して、世界貿易のルールを形作る基盤にもなり得る」と期待感を表明した。また、欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)も「今回の暫定適用開始は、経済成長と雇用創出を加速する世界経済の潜在力に肯定的なシグナルを送ることになるだろう。CETAはEU理念に基づく自由で公正な貿易を支える、最新の先進的な協定だ」「(貿易や投資の自由化を実現するだけではなく)持続可能な開発に対するわれわれの強い意思を示すと同時に、公共の利益に鑑みて規制すべきものを規制する政府の権限を保護するもの」と述べ、EUの理念とも両立するCETAの歴史的意義にも言及した。

今後注目される新たな「投資紛争解決手続き」の運用

欧州委は今回の発表で、CETAの先進性の1つの要素として、投資家が進出国政府との間に投資紛争を抱えた場合の解決手段として投資裁判所制度(ICS)を導入したことを挙げている(2017年2月16日記事参照)。国家と投資家の間の紛争解決手続きについては、国際商事仲裁方式を活用した米国型の第三者を通じた解決手続き(ISDS)に対して、EU側(特に環境保護派や消費者保護団体、労働団体など)の警戒感は根強い。これは、EUが長い年月をかけて積み上げてきた厳しい環境基準、食の安全などのためのルールや労働者の権利保護のための慣行などが、国際商事仲裁を通じて違法化されるとの懸念が背景にあるとみられる。EU側はこうした不安要素を払拭(ふっしょく)するため、CETAでは従来のISDS方式と異なるICSを導入したと、その意義を強調している。

欧州委は2015年12月に最終合意しているEUとベトナムの自由貿易協定(FTA)でも、ICSを導入(2016年2月8日記事参照)し、世界の投資ルール(国家と投資家の間の紛争解決手続き)として、ICSの普及・拡大を目指しているとされる。欧州委は、EU加盟国がこれまで締結した多くの通商協定のISDS方式による紛争解決手続きを、新たなICS方式に置き換える考えがあることに言及している。

143の食品・飲料のGIがカナダでも保護対象に

欧州委はCETAの効果として、「これまでのEU・カナダ間の貿易に必要だった商品検査や通関手続きなどの行政コストが軽減・緩和されることは、中小企業の事業にとっても利益がある」と指摘する。

また、EUの農林水産・食品産業に関しても、「CETAは新たな事業機会を創出する」としている。具体的には、チーズ、ワイン、(ウイスキーなど)蒸留酒、果物・野菜、加工食品を挙げている。このほかCETAの効果として、「EUで認められている143の地理的表示(GI)保護対象の食品・飲料がカナダ国内でも保護される」としている。

欧州委は「EUの通商協定が域内の経済成長・雇用創出にもたらす効果はEU韓国FTAで実証済み」と自信を示す。CETAと同様に、EU韓国FTAは加盟国の批准を経て正式発効(2015年12月13日)する前の2011年7月に暫定適用を開始している。同FTAの暫定適用開始以降、EUの韓国向け輸出は55%以上伸び、一部の農産品は70%も輸出が拡大したとしている。韓国国内でのEU側の自動車販売も拡大し、貿易収支はEU側の黒字を維持できるようになったと指摘している。

なお、関税撤廃を含むCETAの効果を享受するためには、EU側では加盟各国の通関当局に申請して「登録輸出事業者(REX)番号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の取得が必要なため、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は2017年末までに申請・登録を完了するよう呼び掛けている。

(前田篤穂)

(EU、カナダ)

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