付加価値の創出を見据えた自動車の現地生産を提言

(ロシア)

サンクトペテルブルク発

2018年09月25日

第9回モスクワ国際自動車フォーラム報告の最終回。自動車や自動車部品のロシアでの現地生産をテーマにしたセッションでは、現地生産のみならずロシアでの技術開発・付加価値の創出に向けた言及や提案が目立った。

大手会計事務所のKPMGロシア・CISのマクシム・マルコフ国際戦略グループ・ディレクターは、技術開発や付加価値の創出に向け、ロシアのプレーヤーは世界のイノベーションの動向により敏感に反応するべきだと指摘した。その根拠として、世界的に見てロシアの自動車メーカーは研究開発への投資が低調である点(売上高の割合でみると、世界の主要自動車メーカーは平均4.6%、ロシアの自動車メーカーは0.6%)や、イノベーションにおいて重要な役割を果たすスタートアップ企業との協業に後ろ向きである点を、自社による調査結果を交えて紹介した。さらに、ロシアの消費者は個人情報を企業に受け渡すことに抵抗があることを紹介した上で、こうした傾向はビッグデータを利用した自動車の開発の妨げになる可能性を指摘した。

自動車プレス部品メーカーのゲスタンプ・セベルスタリ・フセボロシスクのウラジミル・ベレザンスキー社長は、現地生産の拡大に当たって、政府による税制優遇措置や輸出支援措置は有効だったと評価する一方、現地生産の一層の拡大に向けては研究開発への支援が重要だと指摘した。自動車の内装や排気システムなどを製造するフォーレシアのアレクサンドル・ゴリン・ビジネス発展課長は、自社製品の現地生産の取り組みを紹介した上で、水素燃料電池や、窒素酸化物(NOx)の排出を抑えるアンモニア貯蔵供給システム「ASDS」などの分野において自動車組み立てメーカーとの協業に前向きな姿勢を示した。

(一瀬友太)

(ロシア)

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