財務省、付加価値税率変更に関する留意点を発表

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年09月14日

ロシア財務省は8月1日から28日にかけ、2019年1月に現在の18%から20%へ引き上げられる付加価値税(日本の消費税に相当)(2018年6月15日記事参照)に関係する一連の通達を発表した。内容は、企業間や政府・政府関係機関との契約期間が2019年1月1日をまたぐ場合などの取り扱いに関するもの。関係する日系企業は会計事務所に確認するなどの対応が求められる。

発表されたのは財務省通達第03-07-11/53970号(2018年8月1日付)、同03-07-05/55290号(2018年8月6日付)、同24-03-07/58933号(2018年8月20日付)、同24-03-07/61247号(2018年8月28日付)の4つ。

ロシアの法律関連情報を提供する「ガラント」は、これらの通達に関し注意を要する点として次の5つのケースを指摘している。

  1. 2019年1月以降に実行が予定されている契約を2018年内に締結する場合、契約額の積算には付加価値税は(18%ではなく)20%を適用する。仮に予定期限前(2018年内)に契約を実行した場合は、付加価値税の実際の支払い額と契約額積算根拠との違いから、(相手方や税務当局から)契約額の意図的な引き上げや納税回避行為と見なされる可能性もあり、注意が必要。
  2. 政府調達契約の場合、付加価値税18%で契約額が積算され、実行は2019年1月以降とする契約が既に締結されている場合、新税率20%で再契約をし直すことはできない。一方、連邦政府との契約に関しては100億ルーブル(約160億円、1ルーブル=約1.6円)、連邦構成体との契約については10億ルーブル、市町村との契約に関しては5億ルーブル以上の契約に関しては再契約が許される特例措置がある。特例措置の内容は今後も変更される可能性がある。
  3. 政府系機関、政府系企業などとの間の調達契約(注1)の場合、金額が付加価値税18%を基に締結され、2019年1月以降の執行を予定する契約は、契約相手の合意があれば契約額の改定は可能。その場合、(契約書本文に添付される)契約内容などとの矛盾がないよう注意が必要。
  4. 2018年に契約済みで2019年以降に実行される契約は、(契約額の積算に18%を使用していても)実際の付加価値税の納税額は20%で計算される(注2)。
  5. 2018年内に締結され2019年に実行予定の契約であり、2018年内に代金が一部前払いされた場合、前払い分(2018年)の付加価値税の計算には18%が適用される。他方、2019年に入っての契約実行時には契約額全額に対し20%で算出した付加価値税額から前払分の税額を差し引き精算する。

通達内容は今後変更、修正の可能性がある。また、個別の具体的ケースや所管税務署(の担当官)で解釈や適用が異なる場合がある。関係する日系企業は既存の契約の見直し、契約締結、執行の際は、会計事務所に事前に確認・相談するなど注意が必要だ。

(注1)政府関連機関、政府が株式の50%以上を保有する企業ならびにその子会社などによる統一の調達ルールを定めた連邦法第223-FZ号(2011年7月18日付)に準拠する契約。

(注2)「ガラント」の解釈による。契約額が変更不可能な場合には、これ以外に他の方法かないとしている。実際の運用については税務署、会計事務所など専門機関への確認が必要。

(高橋淳)

(ロシア)

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