連邦裁がフェルナンデス前大統領を収賄罪で起訴

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2018年09月19日

アルゼンチンのクラウディオ・ボナディオ連邦判事は9月18日、クリスティーナ・フェルナンデス前大統領を、公共工事発注の見返りとした収賄罪で起訴した。同判事は、当局による約1億ドル相当の差し押さえを要求した。

一連の汚職が顕在化したのは、2018年8月以降、司法当局が前政権高官の運転手が賄賂などを運搬した詳細な記録を証拠として、民間企業幹部らを逮捕したことによる。司法当局は司法取引を行い、政府高官に捜査対象が拡大。ついにフェルナンデス前大統領まで至ることになり、8月23日には家宅捜索を受けた。

マウリシオ・マクリ大統領は今回の動きに対して、静観を保っている。現政権の誕生の背景には、前政権の汚職体質が「公然の秘密」となっていたことに嫌気がさした国民感情もある。例えば、マクリ政権が開始した官民パートナーシップ(PPP)など入札の手続きでは、特に透明性を意識した手続きが進められている。

今回の事件が現地大手ゼネコン企業幹部らにも及ぶに至り、海外投資家はアルゼンチンに対するマイナスイメージを強めている。実際に、ニコラス・デゥホブネ経済相が9月17日に発表した2019年予算書でも今回の汚職による対内直接投資への短期的なマイナス効果について触れられている。

現在、フェルナンデス前大統領は上院議員であるため、不逮捕特権を有している。そのため、身柄の拘束には、司法当局からの逮捕許諾請求が出された後、議会で3分の2を超える賛成票を得ることが必要とされる。

他方、足元のアルゼンチン経済が芳しくない状況下で、フェルナンデス前大統領は反政権勢力からの支持が厚く、2019年10月の大統領選挙における有力候補となっている。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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