広深港高速鉄道が全面開通、本土と直結

(香港)

香港発

2018年09月27日

香港と広州を結ぶ初の高速鉄道「広州-深セン-香港高速鉄道(広深港高速鉄道)」の香港域内区間が9月23日に開通し、中国本土区間を含め全面開通した(2018年8月24日記事参照)。これにより、香港は2万5,000キロを超える中国本土の高速鉄道網と直接連結された。

香港特別行政区政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は9月22日、香港側のターミナル駅である「西九龍駅」で行われた開通式典において、「香港は高速鉄道の新時代に足を踏み入れた」と宣言した。加えて、「広深港高速鉄道の香港域内区間の開通により、『広東・香港・マカオグレートベイエリア(粤港澳大湾区)計画(注1)』の主要都市である広州、深セン、香港がつながった。ベイエリア内の高速輸送ネットワークはさらに整備され、エリア内の経済・社会・文化面での交流が進むほか、京広旅客専用線と杭福深旅客専用線(注2)を通じて、香港と首都経済圏および長江デルタ地域がつながった。(中国の)3大経済圏がさらに連結性を高めたことは、地域間のシナジー効果を強め、さらなる発展の機会の創造にもつながる」と語った。

広深港高速鉄道がもたらすプラスの効果に期待が寄せられる。9月24日付の香港紙「香港経済日報」は、2017年に香港で宿泊滞在した来訪客約2,778万人のうち、中国本土からの来訪客は約1,853万人で、そのうち53%が広東省からの来訪客とした上で、「高速鉄道の開通は、広東省住民の省外旅行を促進するとともに、中国本土に海外からの来訪客を呼び込む契機ともなる」と報じている。

また、同紙は「広深港高速鉄道の開通によりベイエリア内を1時間で結ぶ生活圏が実現したことは、ベイエリア地域の発展に資する。同高速鉄道の開通に加え、『香港・珠海・マカオ大橋』の開通によりベイエリア内の交通網はさらに整備され、ヒト・モノ・カネ・情報の流れも促進されるほか、金融・経済・貿易・専門サービス分野における香港の優位性の発揮とベイエリア建設の推進を後押しする」としている。

一方で、「西九龍駅」で中国本土および香港の出入境関連手続きを一括して行う「一地両検」が、香港の高度な自治の形骸化を招くことを懸念する声もある。「一地両検」に反対する民主派の立法会(議会に相当)議員は、22日に行われた開通式典をボイコットした。また「西九龍駅」では同日、一部の活動家による抗議活動が行われた。

写真 混雑する開通初日の「西九龍駅」の模様(ジェトロ撮影)

(注1)中国政府が推進する地域発展計画(2018年9月時点で同計画は未公表)。

(注2)京広旅客専用線は、北京市-広東省・広州市間、杭福深旅客専用線は、浙江省・杭州市-広東省・深セン市間の高速鉄道路線。

(吉田和仁)

(香港)

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