上半期の対内直接投資は前年同期比88.5%増

(スペイン)

マドリード発

2018年09月28日

2018年上半期の対内直接投資(届け出ベース、ネット、フロー)は137億4,800万ユーロと前年同期比88.5%増となった。病院買収案件に関わる大規模な引き揚げが発生した前年からの反動増だが、グロスでも21.4%増の約181億ユーロと好調だった。

インフラ・再エネ企業の買収が活発

業種別対内直接投資(表1参照)では、製造業が輸送機器を中心に全体の4割を占め、建設と電力・ガスがそれぞれ約2割を占めた。

輸送機器では、自動車大手グループPSAが2月に、サラゴサ工場でオペル「コルサ」の次期モデル(電気自動車含む)を2019年から全世界向けに生産すると発表し、生産ラインへの投資が始まった。2017年末に完了した航空用エンジンを製造する英国のロールス・ロイスによる航空エンジン部品メーカーITPの買収も当期の統計に反映された。

また、統計には未反映だが、食品ではカバ(発泡ワイン)製造大手のフレシネが3月にドイツ同業ヘンケルより、同じくコドルニウが6月に米国ファンドのカーライルより過半数の出資を受けることで合意し、2大メーカーに初めて外資が入ることになった。

建設では、オーストラリアの投資会社IFMが3月、大手FCCの水事業子会社アクアリアの株式49%を取得すると発表。再生可能エネルギー(RE)分野では、米国のコンターグローバルが2月にアクシオナのスペイン国内の太陽熱発電所の買収を発表、カナダ系投資会社ブルックフィールドが7月、建設大手ACSのRE事業会社サエタ・イールドの株式100%近くを取得するなど、インフラ・プラント関連のスペイン企業買収が相次いだ。

表1 スペインの業種別対内直接投資(届け出ベース、ネット、フロー)

国・地域別(表2参照)では、実質的(注)な1位投資国は米国だった。ファンド勢の活発な投資によりグロスの投資額は前年から7.4倍の約59億ユーロに急増した。スタートアップ分野でも、遠隔診療サービスのテラドックが6月、同業アドバンス・メディカルを買収。2位英国は、包装資材大手DSスミスが6月に同業ユーロパックに約17億ユーロの買収提案を行うなど、EUからの離脱後を見据えた戦略的投資が目立った。

日本からの投資では、カネカが5月に乳酸菌製造ABバイオティクスの株式34.8%を取得し、世界中に輸出されている同社製品の北米、日本での独占製造販売契約を結んだ。またタカハタプレジションは自動車などの機械部品工場を南部ハエン県に新設中で、2018年末より稼働予定だ。

表2 スペインの上位対内直接投資国・地域(届け出ベース、ネット、フロー)

(注)ネットの統計では、資金が流入する直前の国が反映されるため、投資優遇税制を適用するルクセンブルクやオランダが上位となっている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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