外貨建て支払い禁止に広がる懸念

(トルコ)

イスタンブール発

2018年09月25日

2018年9月12日付官報で発表された大統領による法令第32号によると、通貨トルコ・リラの価値の保護を目的に、不動産、リース市場などにおける外国通貨建てによる契約および支払いが禁止される。それによると、9月13日から30日以内の移行期間を経て契約を修正させる必要がある。

不明瞭な適用対象範囲

同法令によると、トルコ居住者(在住者および法人)間で行われる、(1)不動産、動産の売買、(2)金融リースおよび車両のリースを含む不動産および動産の賃貸、(3)雇用(給与支払い)・サービス・請負契約、の取引における外国通貨建てによる契約および支払いが禁止される。また国庫・財務省が、同法令に対する例外措置の決定権を有するとされた。

レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、今後は「輸出、輸入に携わる企業を除き、なんびとも外貨にかかわる必要はない」と述べた。

日系企業を含む外資系企業の間では、現在発表されている内容からは適用対象を十分に判断することができないとして、懸念が広がっている。

特に、名指しされた不動産、コントラクター市場では、貸し付けを外貨建てで行っている投資家に大きな懸念を引き起こしている。トルコに居住している外国人は、その多くが外貨建てによる賃貸契約を行っている。同様に自動車産業においても、販売の主軸である法人向けのフリート販売が外貨建てであることから、市場の縮小が避けられなくなるとみる向きもある。また30日で契約を修正することは、外貨での借り入れが大きい企業には無理があるとの批判も出ている。国庫・財務省は、例外措置の適用が、外貨建て支払い義務を有する個人、法人による契約の順に考慮されるとしている。

他方、現在のところ、外貨建ての支払いが限定的な一般のトルコ人の反応は弱い。「困るのは外貨依存が高い高所得者層のみ」といった指摘もある。

エルドアン大統領は、2018年初から40%以上の減価となった通貨防衛の主軸を、トルコ中央銀行による引き締め(利上げ)ではなく、国内での米ドル、ユーロの流通制限に置く方向性を強く示している。

(中島敏博)

(トルコ)

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