配車サービスの滴滴出行、中国でライドシェアサービスを中止

(中国)

広州発

2018年09月05日

配車サービス大手の滴滴出行(DiDi、以下、滴滴)は8月26日、ライドシェアサービス「順風車」の一時中止と部門責任者の更迭を発表した。8月24日に「順風車」のドライバーによる乗客殺害事件が発生。社会的に強い非難を受けており、有名俳優によるアプリ削除の呼び掛けや、政府による業務停止を視野に入れた業務改善命令が出されている。滴滴は謝罪を公開するとともに、被害者遺族に法律で規定された賠償金の3倍を支払うとしている。「順風車」は運用開始から約3年で10億回以上利用されたという。

当地報道によると、容疑者は事件前日にも、別の乗客に対して助手席に座るよう強制したり、降車した後をつけたりしていた。利用者から滴滴出行にクレームがあったものの、ドライバー資格の停止などの対処はされなかった。また事件発生時、滴滴は被害者の友人から救助要請があったにもかかわらず有効な対応を取らなかった上、警察からの情報開示請求にも応じなかったとされる。

相次ぐ殺人、暴行などの事件

北京市海淀区人民法院によれば、「順風車」では2016年4月と2018年5月にもドライバーによる利用者殺害事件が発生しているほか、強盗、暴行、わいせつ事件なども多発している。5月の事件以降も滴滴が、安全対策を十分に取らなかったことも強い批判を受ける一因となっている。

政府は今回の事件に対し厳しい姿勢で臨んでいる。交通運輸部は8月26日、公安部などと共同で滴滴に対し「経営管理面での重大な不備と安全リスクがある」として業務改善を命じた。また、8月27日には事件時の対応を批判する文章を発表し、「滴滴の責任者の法律責任も検討すべき」としている。

滴滴への批判が全国に広まる中、広東省でも8月27日に省政府、広州市政府、深セン市政府などが各地の拠点責任者に、安全対策の強化や当局へのデータ提出を要求した。従わない場合はアプリストアからの削除や営業許可取り消しなどの処置を取るとした。

日本に進出、ウーバーの事業買収を発表

滴滴は7月にソフトバンクと合弁会社を設立し日本へ進出した。また、8月には米同業大手ウーバーの中国事業買収を発表していた。現在、中国と日本のほかブラジル、メキシコ、オーストラリアでサービスを提供している。

(河野円洋)

(中国)

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