「ノー・ディール」に備える2度目の追加文書を公開

(英国)

ロンドン発

2018年09月26日

政府は9月24日、英国が合意なくEUから離脱する「ノー・ディール」に備えたガイダンスの24の追加文書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(表参照)。8月23日(2018年8月24日記事参照)と9月13日(2018年9月18日記事参照)にも合わせて52の文書を公開している。

表 ガイダンス追加文書一覧

「運転・輸送」の英国からの、または英国へのフライトでは、英国ライセンスを有する航空会社はEU域内便の運航権利を、EUライセンスを有する航空会社は英国内便の運航権利を失うとした。英国やEUからのライセンスを得た航空会社で双方を行き来するフライトには今後、相手方となるEUや英国での事前許可が必要になるとしたが、政府はEUの航空会社に対して現状の運航を継続できる許可を与える予定とし、その代わりにEUからも英国の航空会社に対する許可が得られることを期待している。英国企業が運行する長距離バスも英国で発行されたライセンスがEUで無効となるため、EUでの運行ができない可能性を示唆した。政府はEU離脱後にEU向けの長距離バスのサービスを提供する場合、必要に応じて、在EU企業へ一部または全てを委託する可能性がある条項を顧客との契約書に含めることを推奨した。他方、政府はEUからのバスについては従来どおり乗客を受け入れる予定だ。

「ラベリング製品および安全性」の項目では、化学物質規制(REACH規則)について、政府は現在のEUのシステムを踏襲し、欧州化学品庁(ECHA)の機能を有する国家機関を設立するとした。また、可能な限り現行のREACH規則を維持するとした。ノー・ディール時にはREACHに登録している企業は在欧州経済領域(EEA)機関への登録をしない限りEEA市場での販売ができなくなるとし、EEA市場へのアクセスを保つ措置を講ずることを推奨した。またEEAから化学物質を輸入する在英企業には英国で新しい登録要件が生じるとした。

「ビジネス規制」の著作権では、ネットフリックスなどのオンラインストリーミングサービスで、英国民のEU滞在時、英国のアカウントではアクセスができなくなる可能性があるという。

今回の追加文書について、英国商工会議所(BCC)のマイク・スパイサー調査・経済部長は、市場アクセスを失う業種にとっては不安になるものだったとし、「政府は、今後企業が直面する可能性がある(英国・EU間でのビジネスの)断絶などを最小限に抑えるため、あらゆる可能性に対する措置を講じる必要がある」とした。化学品の産業団体である英国化学工業協会(CIA)は、企業に英国でREACHへの二重登録を課すことは、英国企業の国際的な競争力を削ぐだけでなく、健康や安全を促進させることに寄与しないと批判した。

(鵜澤聡)

(英国)

ビジネス短信 4f5f8789521c29dc