欧州委がWTO改革案を公表、通商ルール刷新の必要

(EU)

ブリュッセル発

2018年09月19日

欧州委員会は9月18日、WTOの改革に向けたEUとしての包括的アプローチを示すPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を明らかにした。EUとしては、現在の国際経済の実勢に見合うように通商ルールを刷新する必要があるとしており、9月20日にジュネーブで予定されている関係国との協議でも提示する考えだ。

経済・政治・技術の変化に対応できる、新たなWTOに期待

欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は今回の発表で、これまでのWTOや国際貿易システムの役割・機能の評価について、「WTOは激動する世界経済の実勢に十分に適応しているとは言えない」との認識を示し、EUとして積極的にWTO改革を進める姿勢を打ち出した。EUがWTO改革の主軸としている主な課題は、次の3点。

  1. 現在の国際経済に対応する、通商ルールの刷新
  2. WTOとしての(不公正貿易慣行などに対する)監視機能の強化
  3. 機能不全に陥りかけているWTOの紛争解決システムの打開策

欧州委は、この問題について既に日本と米国とは3極貿易担当相会合の機会に、中国ともEU中国首脳会談に伴う作業部会で議論を開始したとし、さらに、その他のWTO加盟国との協議も続ける方針だとしている。

EUとしては、新たな経済・政治・技術の動きに連動した、新たな通商ルールを確立する必要があると指摘。特に、国営企業に対する国家補助が引き起こす「市場歪曲(わいきょく)」については、現在の通商ルールでは適切に対処できないとの問題意識を明らかにしている。

なお、欧州委のジャン=クロード・ユンケル委員長は7月25日、米国のドナルド・トランプ大統領との会談で、WTO改革でも連携を強化することで合意(2018年7月26日記事参照)しており、今回の発表で、具体的な改革に向けたEUとしての方向性を示したかたちだ。

(前田篤穂)

(EU)

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