違法伐採木材の対日輸出に環境団体が警鐘

(ルーマニア)

ブカレスト発

2018年08月06日

ルーマニアに5つの工場を持つオーストリアの木材大手シュバイクホーファーについて、国際環境NGOである環境監視機構(EIA)は7月17日に公表したレポート「Behind the Scenes」で、「EIAやルーマニア環境省の警告にもかかわらず、国立公園で違法伐採を継続している」と糾弾した。また、同社によるルーマニアからの輸出の半分以上は日本の一般住宅向けだとし、日本の輸入商社に十分なデューデリジェンスの実施を求めている。

シュバイクホーファーは2002年にルーマニアに進出し、2010年以降は製材品を中心に日本向け輸出量が増加し、2013年以降は集成材の輸出も漸増傾向にある。2016年のルーマニアから日本への木材輸出額はほぼシュバイクホーファーによる日本への輸出額(「Behind the Scenes」による)に近い数値となっている。

シュバイクホーファー側は、業界団体の調査には積極的に応じ、合法な木材流通に向けて企業責任を果たしていくとの姿勢を示している。一方、ルーマニア環境省は2015年7月30日、シュバイクホーファーの2工場(セベシュ、ラダウツィ)に立ち入り調査をし、違法に伐採した木材の加工、輸送および販売が行われている趣旨の調査レポートを発表した。さらに、同省は2017年2月21日付で、シュバイクホーファーに対する森林管理協議会(FSC)の認証を停止する旨、発表した経緯がある。現在は政府の組織犯罪・テロ調査局(DIICOT)において、同社の監視を続けているが、ルーマニアに進出しているブリコ・デポやルロイ・メルランなどフランスの大手DIYストアでは、シュバイクホーファーからの木材購入を停止する動きが見られる。

木材・木炭はルーマニアから日本への輸出額の6割を占める(表参照)。7月17日に署名された日EU経済連携協定(EPA)の発効後は、日本側の木材輸入関税は段階的に引き下げられて8年目に撤廃となる。現行の主要木材の日本側の関税率は、SPF材が4.8%、構造用集成材が3.9%、パーティクルボードが5.0~6.0%で、同EPAの発効はルーマニア側にとっては追い風でもあるだけに、違法伐採問題への取り組みをルーマニアでも日本でも継続していく必要があるだろう。

表 ルーマニアから日本への輸出額(2017年)

(水野桂輔)

(ルーマニア)

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