通貨レアルの対ドルレート下落進む、2016年2月以来の水準に
(ブラジル)
サンパウロ発
2018年08月28日
ブラジルの通貨レアルの対ドルレートが、8月22日に終値で1ドル=4.07レアルと通貨安が進んでいる。1ドルが4レアルを超える水準を記録したのは2016年2月以来だ。当時はルセフ政権の財政悪化懸念が強まる中、汚職問題などによる政権不信が顕著となり通貨安が進んだ経緯がある。現在の為替下落要因をみると、外的には米国金融政策の動向、米中の貿易摩擦、アルゼンチンやトルコなど新興国の一部における通貨下落や経済混乱が続いていること、内的には先行き不透明な10月のブラジル大統領選挙が挙げられる。2018年4月2日時点の為替水準は1ドル=3.31レアルだったが、8月22日までに対ドルで18.7%下落したことになる。
通貨安の影響で最も注目されるのが物価への影響だ。特に食料品は消費者物価指数の構成で大きな割合を占めており、輸入に依存する小麦をはじめ、ドルベースでの国際価格の影響を受けやすい農産物の物価がインフレ率全体を押し上げる構図となる。2018年7月時点での物価(拡大消費者物価指数、IPCA)上昇率は前年同月比で4.48%、中でも飲食料品は1.40%にとどまっている。ただし前年同月時点で同指標をみると、全体で2.71%、飲食料品はマイナス0.66%で、徐々に上昇している。物価上昇圧力が強まれば、政策金利(Selic)引き上げの可能性が高まり、景気回復には逆風となる。ブラジル中央銀行はSelicについて2018年3月以降、連続して年率6.50%で据え置いている。
なお、ブラジル中銀の資料で対外経済指標をみると、2018年上半期(1~6月)の経常収支は35億8,600万ドルの赤字だが、GDP比では0.38%と低水準にある。また、直接投資受入額は299億ドルでGDP比3.2%、外貨準備高は2018年7月末時点で3,794億ドルと高水準にある。これらをみる限り、対外経済指標の脆弱(ぜいじゃく)さはみられない。しかし、複雑な外部環境に加えて、不透明な大統領選挙の動きは、為替のボラティリティー(価格の変動幅)を高め、ビジネス全般にネガティブな影響を及ぼしている。ブラジル日本商工会議所が8月23日にサンパウロ市で、2018年下半期の業種別部会長シンポジウムを開催したところ、進出日系企業からはビジネス上の課題の1つとしてレアル安と為替リスクへの対応を指摘する声が多く聞かれた。
(二宮康史)
(ブラジル)
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