NAFTA暫定合意、現新大統領ともカナダの参加が必要と強調

(メキシコ、米国、カナダ)

メキシコ発

2018年08月29日

8月27日に発表されたメキシコと米国の北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の暫定合意を受け、エンリケ・ペニャ・ニエト大統領とアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)次期大統領は満足の意を表している。しかし、ともにカナダが加わる必要性を強調しており、カナダと米国との早期合意に期待している。

ペニャ・ニエト大統領は8月27日午前のトランプ大統領との電話会談で、達成された合意内容はバランス良く双方にメリットをもたらし、事業者に安心を与えるものだと両国の交渉官をたたえた。また、合意にカナダが加わることの重要性を強調し、3カ国間で8月中に交渉を終わらせることに期待感を示した(大統領府8月27日付プレスリリース)。AMLO新大統領は、新NAFTAにおいてもエネルギー分野のメキシコの国家主権が尊重されていること(注)、自動車産業の労働者の将来的な賃金上昇につながる規定が加わったこと(2018年8月28日記事参照)を評価したが、3カ国のNAFTAを存続させるため、カナダが加わることの重要性を強調した(AMLO氏ウェブサイト8月27日付プレスリリース)。

産業界はおおむね歓迎

全国工業会議所連合会(CONCAMIN)のフランシスコ・セルバンテス会長は、「合意には公平な貿易のための規定が盛り込まれており、わが国により多くの投資を呼び込む保証となる」と評価した(CONCAMIN8月27日付プレスリリース)。

他方、全国経営者連合会(COPARMEX)のグスタボ・デ・オジョ会長は、NAFTAを存続させるために特定産業における交渉で譲歩を強いられたことを明らかにし、「現行NAFTAで十分に機能することは分かっているものの、全てを失うよりは譲歩する方が良かった」と語った。さらに、「自動車、繊維、医薬品の分野では新たなルールに適合するという課題に直面する」としながらも、既存の自動車メーカーは新ルールと共存可能だと語った(「エル・エコノミスタ」紙8月28日)。

(注)エネルギーの章の再交渉では、2013年末のエネルギー改革の実現を受け、同分野の投資・サービスの自由化を盛り込む内容で既に合意されていたが、AMLO氏は最近になって同章の実質的な内容(自由化)はともかく、メキシコの憲法上は炭化水素資源が国家に一義的に帰属することに配慮する書きぶりに変更するよう米国政府に要請していた。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国、カナダ)

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