高速鉄道やMRT3号線の計画が中止に

(マレーシア)

クアラルンプール発

2018年06月08日

マハティール新政権は、選挙公約である「大型インフラプロジェクトの見直し」を進めている。公約では、大量輸送システム(MRT)、軽量輸送システム(LRT)、東海岸高速鉄道(ECRL)、クアラルンプール~シンガポール間高速鉄道(HSR)、パン・ボルネオ高速道路が具体的な見直し案件として挙げられていた。金融行政の透明性向上のため、前政権下で承認された大型プロジェクトが公平で透明性の高い調達手順を踏んだかどうか再調査する。

大型プロジェクト見直しは喫緊の課題

5月24日にはリム・グアン・エン財務相が、政府保証債務などを加えたマレーシア政府の債務総額がGDPの約80%に当たる1兆870億リンギ(約30兆4,360億円、1リンギ=約28円)に上ることを発表。政府債務の削減のためにも、大型プロジェクトの見直しは喫緊の課題となっている。

モハマド・アズミン・アリ経済相は5月22日、大型インフラプロジェクト見直しに着手すると発表し、28日にはHSR、30日にはMRT3号線の計画中止を決定した。それぞれの総工費は、HSRが1,100億リンギ、MRT3号線が400億~450億リンギと見込まれていた。HSRは、2017年12月にシンガポール政府と合意した案件のため、マレーシア政府は今後、両国間で話し合いを行うとしている。

中国がらみのECRLも見直しの対象

総工費550億リンギのECRLも見直しの対象となっている。ECRLは中国交通建設が受注し、中国輸出入銀行が融資するプロジェクトで、2017年8月に竣工(しゅんこう)式が行われた。マハティール首相は6月6日、「ECRLについては再検証の上、延期または中止する」と表明している(「ザ・エッジ」紙6月6日)。

このほか東マレーシアのサバ州とサラワク州にまたがる「パン・ボルネオ高速道路」、クアラルンプール市内に開発予定の国際金融特区「トゥン・ラザク・エクスチェンジ(TRX)」、HSRの始発駅を含めた都市開発計画「バンダル・マレーシア」についても見直しが行われる予定だ。

(田中麻理)

(マレーシア)

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