国内最大の野外音楽フェス「Untold」で日本食にも商機
(ルーマニア)
ブカレスト発
2018年08月21日
成長著しいルーマニアの地方都市クルージュ・ナポカで、「Untold(アントールド)」という国内最大規模の野外音楽フェスティバルが毎年、盛り上がりをみせている。4年目となる今回は、8月2~5日の4日間で延べ35万5,000人の来場者数を記録したと報じられている。同市の人口は約32万人で、会期中に人口を上回る来場者を国内外から迎えたことになる。集客の秘訣(ひけつ)は、参加アーティストの顔ぶれだ。ブラック・アイド・ピーズ(米国)、ザ・プロディジー(英国)、スティーヴ・アオキ(米国)らに加え、人気DJのアーミン・ヴァン・ブーレン(オランダ)は初回から連続出演し、今やUntoldの「顔」になっている。
Untold会場での日本食ブースが好評を博す
フェスティバル期間中は、会場内に多くの飲食店ブースが立ち並び、活況を呈した。クルージュ・ナポカを拠点とする日本食レストラン「TOKYO」および回転ずし店「WASABI」を経営する土屋尚史氏も出店者の1人だ。同氏は今回、2ブースを出店し、さらにVIPルームでも本格的なすしと日本食を提供した。また、アサヒビールのスーパードライを販売し、好評だったという。これは、クルージュ・ナポカ発祥の国内最大手ビール会社ウルススが、2017年にアサヒビール傘下になった縁による。アサヒビールは2017年3月に、ウルススを含む中・東欧5つのビール事業をベルギーのビール最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブから約73億ユーロで買収していた。
今回の成果について、土屋氏は次のように語る。「今年は本店の1カ月相当の売り上げを、4日間で挙げられるほど盛況だった。一方、年ごとに飲食店ブースの数が増え、競争が激化している。会場内の全ての支払いはプリペイドカードで電子的に行われ、主催者が個別の売り上げを把握できる。従って、売り上げが悪いブースは翌年、出店待ちの企業に場所を奪われてしまう。Untoldは国内外から流行に敏感な若者が集まってくるため、日本食への嗜好(しこう)や今後のトレンドを知る上でも貴重なマーケティングの場でもある」
ここ数年、ルーマニアでも、すしや鉄板焼きなどを提供する飲食店が増えており、ジェトロの「日本産食材サポーター店」(注)認定数は11件(2018年6月30日現在)。欧州有数の野外音楽フェスの1つとなったUntoldでも、日本食の商機がありそうだ。
(注)日本国外にある「日本産」食材・酒類を使用しているレストラン・酒専門店、日本食材・酒類を取り扱う小売店を認定する制度。
(水野桂輔)
(ルーマニア)
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