経済相、対米輸出車の7割は新原産地規則に適合と発言

(メキシコ、米国、カナダ)

メキシコ発

2018年08月29日

イルデフォンソ・グアハルド経済相は8月27日、在米メキシコ大使館で記者会見し、北米自由貿易協定(NAFTA)で自動車の原産地規則が厳格化されたことについて、完成車の域内原産割合(RVC)が現行の62.5%から75%に引き上げられ、そのうちの40%(ピックアップトラックは45%)は時給16ドル以上の地域(以降、高賃金地域)で付加されなければならなくなったが、現時点でメキシコから対米輸出されている自動車の約7割(68%)がこれら新規則を既に満たしていると語った。

米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が発表している、米国自動車ラベリング法(AALA)に基づく北米販売自動車の米国・カナダ部品調達比率に関するデータ(2018年モデル)をみると、メキシコで組み立てられて対米輸出されている54のカーライン(モデル)のうち、米国・カナダ比率が40%(分母は総部品費用)を超えるのは8カーライン(14.8%)しかない。新規則の詳細の発表を待つ必要はあるが、経済相のいう数字との大きな差を考えると、高賃金地域における付加価値の算出方法は、単純な部品調達比率の計算とは異なる可能性が高いとみられる。

232条の適用除外を見込む

グアハルド経済相は記者会見において、新原産地規則を満たさないメキシコ製自動車(「既存工場および建設中の工場で生産される自動車」と言及)については、米国でWTO加盟国に適用されるMFN関税率が課されることになると強調し、米国が今後1962年通商拡大法232条を自動車に適用したとしても、メキシコ製自動車は適用除外になるとした。232条については、大手テレビ局テレビサが28日朝に行ったインタビュー番組で、ルイス・ビデガライ外相も「米国の将来的な232条に基づく自動車・同部品への追加関税の適用からメキシコが最初に除外される国である」と語っている。

232条の追加関税が課されない場合、米国の乗用車に対するMFN関税率は2.5%であるため、たとえNAFTAが利用できなくても乗用車の場合は関税負担は大きくない。他方、ピックアップトラックのMFN関税率は25%と高いが、トラックについては北米からの部品調達が多いため、新規則を達成してNAFTAを利用できる可能性が高い。前述のNHTSAのデータによると、トヨタの「タコマ」も含め、現在メキシコから対米輸出されている全てのピックアップトラックについて米国・カナダ部品調達比率は45%を超え、メキシコでの調達分を含めると平均81.0%に達する。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国、カナダ)

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