2017年の持ち家保有率はやや上昇するも低水準

(米国)

ニューヨーク発

2018年08月17日

米商務省センサス局は8月13日、2017年の持ち家保有率に関するレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。それによると、保有率は63.9%と前年(63.4%)をやや上回ったが、依然として全ての年齢層で「世界金融危機前の2006年の水準を下回っている」という。

年齢別にみると、65歳以上の層が78.7%と引き続き最も高かった一方で、35歳未満の層はその半分以下の35.3%にとどまっており、「35歳未満の層が持ち家を保有する可能性は、65歳以上の層よりかなり低い」とした。

図 年齢別の持ち家保有比率の推移

また、2009年以降の景気回復が続く中で、65歳以上は2006年の水準(80.9%)を2.2ポイント下回る水準まで回復したが、35歳未満(2006年:42.6%)や59.0%の35~44歳(2006年:68.9%)は、依然として金融危機前の水準を7~10ポイント程度下回っている。センサス局の人口統計学者ジョナサン・ベスパ氏は、「多くのアメリカ人は理想の結婚年齢を25歳と考えているが、実際はその年齢までに成人の約4分の1程度しか結婚していない」とし、「結婚と持ち家保有は密接に関係しており、若年層は(晩婚化に伴って)持ち家保有の時期を人生の後半に先送りしているのかもしれない」と述べた。

若年層の持ち家保有時期の変化に加えて、世界金融危機後の景気変動の影響を指摘する声もある。ニューヨーク連邦準備銀行のレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、金融危機後に住宅販売や価格が大きく低迷し、その後の回復が遅かった地域(フロリダ州、アリゾナ州、ネバダ州、カリフォルニア州など)では、家計のバランスシートを健全化するため、住宅ローン残高の増加を抑える傾向にあったと指摘。これに加えて、その後の「住宅価格上昇は、(借り入れを行う際の月々の住宅ローン返済額や頭金の上昇などによって)住宅非保有の消費者による家の購入をより困難にし、持ち家保有を抑制する可能性がある」とした。

ニューヨーク連邦準備銀行の調査官リー・ドンフン氏は、世界金融危機の影響が大きかった地域において、「住宅ローン残高が(危機前の水準と比べて)抑制されていること自体は必ずしもマイナスの結果と言えないが、(危機後の回復ペースに)地域差があることは、世界金融危機の影響が(少なからず)残っていることを示唆している」と述べた。

(権田直)

(米国)

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