世界最大の原子力砕氷船、沿海地方で建造へ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年08月06日

造船関係のフォーラム「国際極東モルスコイ・サロン」が7月26~28日、初めてロシア極東沿海地方のウラジオストクで開催された。連邦政府からはユーリ・ボリソフ副首相が出席し、沿海地方の造船企業「ズベズダ」に対する政府支援の継続や、極東での造船クラスター創設構想などについて述べた。

同フォーラムはこれまでサンクトペテルブルクで開催されていたが、ロシア極東の造船産業振興に力を入れる連邦政府の方針(2017年11月21日記事参照)もあり、今回からウラジオストクと1年交代で開催されることとなった。デジタル時代の海運、アジア太平洋地域での競争、ユーラシア経済連合(EEU)内での生産協力、機器生産の現地化、イノベーション、港湾の在り方、北極海航路の発展などの観点から議論が行われた。

ボリソフ副首相はパネルディスカッションで登壇し、造船業界への政府支援に言及。沿海地方のボリショイ・カメニ市にある造船企業「ズベズダ」に関し、年33万トンの鋼材加工能力はロシアの造船能力の半分を占め、現在アフラマックス級の大型タンカーから小型砕氷船まで25隻を建造中で、近々15隻の契約を受注する予定と説明。アジア太平洋地域の国々と協力を進め技術移転と生産現地化を推進し、軍需中心の受注構造を転換し民間船舶の割合を50%まで高めること、融資やリースの金利軽減などに向けた業界向け予算を2019年に35億ルーブル(約63億円、1ルーブル=約1.8円)以上(100隻以上を対象とする想定)確保していること、また、計画されている世界最大の原子力砕氷船「リデル」をズベズダで建造予定であることなどを述べた(注)。

船舶機器については、現在その大半を輸入に頼っており、将来の(米国などによる)経済制裁の対象に船舶機器が含まれる可能性も考慮し、生産の現地化を推進するとともに、現在サンクトペテルブルクに集中する船舶機器関係の研究機関をロシア極東にも設立、製造や船舶修理などと合わせて「造船クラスター」の創設を検討することを明らかにし、韓国、中国が優位に立つ造船業界で、北極海航路や太平洋地域を中心にロシアの存在感を高めるとした。

このほか、同フォーラムではズベズダと金属加工機械大手ウラルマシザボド(エカテリンブルク)との間で320トンの橋形クレーン2基の納入契約が締結された。

写真 ズベズダの本社ビル(ジェトロ撮影)

(注)沿海地方政府のアレクセイ・ピカロフ工業部長は記者会見で、「(ズベズダでの「リデル」建造の決定については)近い将来に文書のかたちで確認される」と述べている。「リデル」は「リーダー」の意。

(高橋淳)

(ロシア)

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