携帯大手3社、上半期はいずれも増収増益に

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年08月27日

ロシアの携帯通信大手3社が発表した2018年上半期決算(国際会計基準)では、いずれも増収増益となった。最大手MTSの売上高は前年同期比5.1%増の2,222億7,100万ルーブル(約3,556億円、1ルーブル=約1.6円)、純利益(注)は9.2%増の297億400万ルーブル。このうちロシア国内での売上高は5.7%増の2,074億4,100万ルーブルで、OIBDA(減価償却前営業利益)は23.4%増の1,006億9,700万ルーブルだった。増収の要因は、モバイルインターネットの利用拡大や高価格帯のスマートフォン端末の売り上げ増加など。ビャチェスラフ・ニコラエフ副社長は、同業他社との価格競争ではなく、サービスの質的向上や商品の多様化を目指す「市場全体の健全化」も好決算に寄与した、と説明する。

また大手メガフォンの売上高は1,583億9,600万ルーブル(前年同期比3.9%増)となり、純利益は前年同期の非現金減価償却などによる純損失64億400万ルーブルから262億9,300万ルーブルの黒字に転換した。さらに、「ビーライン」ブランドの通信会社ベオン(旧「ビンペルコム」)もロシア国内の売上高を1,388億9,300万ルーブル(4.5%増)、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前の利益)を524億4,700万ルーブル(2.8%増)と業績を伸ばした。

ロシアの通信業界では、治安維持のため通信記録の保管を義務付ける新法(いわゆる「ヤロワヤ法」、7月1日から施行)が、関連企業の業績に悪影響を及ぼす可能性が指摘されていた(2018年5月29日記事参照)。しかし、政府内での調整の遅れにより、関連運用規則や要件が未整備で、その影響から企業側も対応が遅れている。通信・マスコミ省(現デジタル発展・通信・マスコミ省)が提案した、オペレーターが新法に対応するための設備や要件などを定める規則案に対し、経済発展省はそれらの導入コストが関連投資を阻害するとして反対している。

また、ロシアでは連邦反独占局の主導による、国内ローミング料金の廃止に向けた動きが大詰めを迎えている。大手3社では2018年春までに自社エリア外のローミング(「ナショナル・ローミング」)に係る料金を撤廃した後、自社エリア内・契約地域外ローミング(「イントラネット・ローミング」)の料金も8月下旬から9月初めにかけて廃止する予定。

国内ローミング料金の廃止の影響については、見方が分かれる。収入減少から下半期の売り上げ減速につながるとの見方がある一方、各社における自社エリア内・契約地域外ローミングによる売上高は全体の3%程度にすぎず、影響は限定的(TMTコンサルティングのコンスタンチン・アンキロフ社長)との見方もある(「タス通信」8月20日)。

(注)親会社株主に帰属する純利益。

(市谷恵子)

(ロシア)

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