「失業保険・職業訓練・見習い研修」改正法が可決

(フランス)

パリ発

2018年08月15日

失業保険、職業訓練と見習い研修に関する制度を改正する「職業における将来を選択する自由のための法律PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」が8月1日に可決された。労働者の保障を強化し、自主退職者や自由業者にも失業保険を給付、職業訓練制度を簡素化する。同法には、フランス国外から派遣される労働者の違法就労に対する罰則強化条項も盛り込まれた。

「フレキシキュリティ」を目指し、セーフティーネットを構築

政府は、セーフティーネットを設けることで、労働市場の流動性を促す。解雇を簡素化した2017年9月の労働法改正(2017年10月16日2017年10月17日記事参照)に引き続き、失業保険・職業訓練制度の拡充を図ることにより、「フレキシキュリティ」(注)の確立を目指す。

具体的には、自主退職者の辞職の理由が現実的かつ具体的な転職や起業である場合、失業保険の給付対象とする。自由業者も、その事業が裁判上の更生、清算の対象となる場合、失業保険を受給できるものとする。給付条件は、デクレ(政令)で定めるが、自主退職者は勤続5年以上の労働者を対象とする見込みだ。自由業者の失業保険について、ミュリエル・ペニコ労働相は「年間1万ユーロ以上の売上高の自由業者を対象とし、800ユーロを6カ月支給」との考えを示している。

また、政令で規定された知識・能力などに関して、外部機関が提供する職業訓練を、労働者が労働時間内外(労働時間内の場合は雇用主の許可が必要)に受講できる制度「職業訓練個人口座制度(CPE)」については、労働者の受講の権利をこれまで時間(1年間で24時間、累積の上限150時間)で管理したが、金額に変更する。政府の発表では、フルタイムの労働者は、1年間に500ユーロ分、累積の上限は5,000ユーロとなる。また、労働者がスマートフォンで研修に申し込めるアプリも用意される。

従業員250人未満の企業を対象とする見習い研修制度は、従来の複数の補助金制度と税控除の制度を1つにまとめる。

同改正法には、国外から派遣される労働者の違法労働に対する罰則を強化する条項も盛り込まれた。派遣労働者の違法労働は、違法労働者1人につき罰金4,000ユーロ、再犯の場合は8,000ユーロとなる。本措置では、外国企業が自社社員をフランスに在籍出向(サラリエ・デタッシェ)で駐在させる際の、フランス労働省に対する事前申告漏れも、対象となる点では注意を要す。

フランス版フレキシキュリティの導入は、マクロン大統領の公約の柱だ。ぺニコ労働相は、同法の施行により「世界的な景気の後退がなければ、2022年までに失業率を7%に引き下げるマクロン大統領の目標は達成可能だ」と述べた。

(注)柔軟性を意味する「フレキシビリティー」と、保障を意味する「セキュリティー」を組み合わせた造語で、企業が業績や景気に応じて従業員数を調整しやすくするなど労働市場の柔軟性を維持しながら、解雇された労働者の再就職に向けた職業訓練や生活保障などを強化する雇用政策。

(奥山直子)

(フランス)

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