中国の意思決定機関に香港・マカオが初めて正式参加

(中国、香港、マカオ)

香港発

2018年08月20日

中国政府は8月15日、地域発展計画「広東・香港・マカオグレートベイエリア(粤港澳大湾区、以下、ベイエリア)計画」推進に向けて組織したワーキンググループ「粤港澳大湾区建設領導小組(以下、小組)」の第1回全体会議を北京で開催した。広東省から李希・中国共産党広東省委員会書記(共産党中央政治局委員)、馬興瑞省長が出席したほか、香港特別行政区政府(香港政府)トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官、マカオ特別行政区政府(マカオ政府)トップの崔世安(フェルナンド・ツイ)行政長官も正式メンバーとして出席した。香港とマカオの政府関係者が、中国政府の意思決定機関に正式メンバーとして加わったのは初めて。

林鄭長官は同日、北京で記者会見し、小組トップの「組長」には韓正・副首相(中国共産党中央政治局常務委員)が就任、事務局(弁公室)が国家発展改革委員会内に設けられることを明らかにした。また中国政府内で香港・マカオに関する事項を管轄する国務院港澳事務弁公室の張暁明主任は同日、韓正副首相が、共産党内で香港・マカオに関する事項を管轄する中央港澳工作協調小組トップの組長にも就任していることを明らかにした。

林鄭長官によると、今回の小組の全体会議で、香港との関連で決定された事項は以下のとおり。

1.中国政府が、ベイエリアを「国際テクノロジー・イノベーションハブ」として発展させることを支持。広東省、香港、マカオ3地域間のイノベーション・科学技術分野の協力を強化する。

具体的措置は次のとおり。

  • 香港における研究開発(R&D)拠点「香港サイエンスパーク」内に、中国最大の科学技術研究機関である「中国科学院」傘下の「広州生物医薬・健康研究院」および「中国科学院自動化研究所」の拠点が入居
  • 中国および香港でそれぞれ科学技術・イノベーション行政を管轄する「科学技術部」および「創新科技局」が今後、中国本土と香港との間の科学技術に関する協力覚書に調印
  • 中国政府が、「ベイエリア院士(注)連盟」を香港に設置することに同意

2.香港、マカオ住民の中国本土での就業、留学、生活の円滑化に向けて、今後具体的な措置を研究し具体化する。

具体的措置は次のとおり。

  • 香港・マカオ住民のベイエリア域内における通信・ローミング費用の大幅な低減
  • 港・マカオ住民のベイエリア内での銀行口座開設手続きの簡素化
  • 港内で利用できる電子決済システムを中国本土のベイエリア内の都市でも使用可能に

(注)院士とは中国の科学技術研究機関である中国科学院および中国工程院の会員を指す、科学技術分野で最高の称号。日本の学士院会員に相当。

(中井邦尚)

(中国、香港、マカオ)

ビジネス短信 2ca0e30faceb4ba7