輸出依存の経済、米中貿易摩擦の影響を有識者らは懸念

(タイ)

バンコク発

2018年07月19日

タイ経済は、拡大する輸出と増加する外国人観光客といった外需が牽引し、好調を維持しているが、国内では米中貿易摩擦の影響を懸念する声が出始めている。一方、政府は比較的楽観視しているように見受けられる。

タイ銀行(BOT、中央銀行)が7月4日に公表した「金融政策報告2018年6月」は、タイ経済の主なリスク要因として米国の保護主義的貿易政策を挙げ、輸出依存度の高いタイ経済は、想定以上の悪影響を受ける可能性があると指摘している。

有識者の間でも、米中の貿易摩擦に対する見方は厳しくなっている。民間シンクタンクのタイ開発研究所(TDRI)は「米中双方の貿易相手国であるタイは、この貿易戦争からの悪影響を避けることはできない」としている。「米中のサプライチェーンに組み込まれているタイ製部品の割合は大きくないため、その影響はおおむね対GDP比0.04%と見込まれる」としつつ、「コンピュータ、電子、自動車、繊維、ゴム、プラスチックといった品目・業種のサプライチェーンにはタイ製品が組み込まれており、短期的には直接影響を受ける可能性がある」との見方も示した。また、カシコン研究所は「タイ経済にとり、米中の貿易戦争からの影響はメリットよりデメリットの方が大きく、2018年の後半にかけて(輸出額の減少が)2億8,000万ドルから4億2,000万ドルに上るとみられる。もしその報復措置の応酬が長期化するようなら45億ドルにも及ぶ可能性がある」と指摘するなど、貿易摩擦が長引くことに懸念を示した。

その一方で、タイ政府関係者は比較的楽観視しているようだ。ソムキット副首相は「(米中の)貿易戦争はタイの輸出セクターに深刻な悪影響を与えるとは考えていない」としている。アピサック財務相も「タイ経済は貿易相手国の経済に依存しており、2018年の輸出は引き続き良好な状況が続くとみられる。世界的な貿易戦争のリスクがあるとしても、タイ経済への悪影響はほとんどない」と述べるなど、好調な経済を背景に強気な見方をしている。

(阿部桂三)

(タイ)

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