サッカーW杯開催が経済成長率を0.1~0.2ポイント押し上げ

(ロシア)

モスクワ発

2018年07月10日

ロシア中央銀行は6月29日に公表した四半期金融政策報告の中で、サッカーFIFAワールドカップ(W杯)の開催(6月15日~7月15日)が2018年の経済成長率を0.1~0.2ポイント押し上げるとの推計を発表した。ロシア中銀は押し上げ効果が主に第2四半期(4~6月)の成長率に表れるとし、同四半期の成長率(前年同期比)を1.8~2.2%と予測している。

中銀の報告では、2018年の商品・サービス輸出額の見通しは前年比20%増と、2年連続で増加するとしている。輸出増加の要因として、資源価格の上昇や外需の高まりに加え、W杯開催効果を挙げた。W杯効果は、観光収入によるものとみられ、ホテルやレストラン、輸送サービス、小売りにおける売上高の増加が見込まれる。

決済サービス大手のビザ(VISA)の発表(7月2日)によると、6月28日のグループリーグ終了時点における、スタジアムやファンゾーン会場などでの同社カード(注)による出場国・地域別決済額は、地元ロシアが1位で5億1,052万ルーブル(約9億円、1ルーブル=約1.8円)、2位にメキシコ(7,432万ルーブル)、3位にアルゼンチン(3,128万ルーブル)が続いた(表参照)。日本は9位で1,689万ルーブルだった。出場32カ国・地域合計で8億5,414万ルーブル、地元ロシアを除くと3億4,362万ルーブルに上った。W杯初日の統計では、非接触型の決済が54%を占めた。うちロシア人による非接触型の利用が66%と、外国人の利用比率(34%)のほぼ2倍になった。

表 出場国・地域別のビザ・カード決済額

一方、関連インフラ建設需要の終了による反動がみられる地域も出ている。中銀の報告によると、沿ボルガ地域では、W杯スタジアムの建設やニジェゴロド州とサマラ州での物流インフラ整備が完了したため、前年に比べて建設活動が落ち込んだ。2018年1~5月のニジェゴロド州、サマラ州の建設完工額はそれぞれ前年同期比18.3%減、16.4%減となり、沿ボルガ地域全体で10.3%減だった。

W杯ロシア大会の組織委員会が開催前の2018年4月に発表した推計によると、W杯開催に伴うインフラ整備など投資も含めた2013~2018年における経済効果は累計8,670億ルーブルで、年間GDPの約1%に相当する(図参照)。開催後の2019~2023年も1,500億~2,100億ルーブル(うち観光が400億~700億ルーブル)の経済効果が生じるとしている。

図 W杯開催の経済効果

(注)スタジアムなどW杯関連会場でのカード決済はFIFAパートナーであるビザに限られている。決済にはカードだけでなく、同社の技術を利用したモバイル決済も含む。

(浅元薫哉)

(ロシア)

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