EU離脱支持派の閣僚が相次ぎ辞任

(英国、EU)

ロンドン、ブリュッセル発、欧州ロシアCIS課

2018年07月10日

デービッド・デービスEU離脱相は7月8日深夜、閣僚を辞任することを発表した。デービス氏の下で政務次官を務めたスティーブ・ベーカー氏も同日に辞任を表明。首相公式別邸(チェッカーズ)で6日、EUとの将来関係に関する閣議が開催され、全閣僚が合意したとして政府が今後のEUとの交渉方針を発表した(2018年7月10日記事参照)直後の閣僚辞任となった。

デービス氏はテレーザ・メイ首相に宛てた辞表の中で、最近の政府の〔EU離脱(ブレグジット)に関する〕交渉戦略の傾向は国民投票で示された民意の実現、そして、われわれが約束した関税同盟と単一市場からの離脱の実現を次第に困難にするものになっており、(今回閣議で合意した)「共通の規則」を適用する交渉方針は、経済の大部分のコントロールをEUに明け渡すものであり、本質的に主権を取り戻すことにはならないとした。ただ、何が正しいか判断の難しい事柄であるからこそ、メイ首相のアプローチを支持する者がEU離脱相を務めるべきだとした。

9日にはデービス氏の後任として、住宅・コミュニティー・地方政府省の住宅担当閣外相だったドミニク・ラーブ氏が選任された。同氏は2016年のEU離脱の是非を問う国民投票の際には離脱支持の運動を行っていた。

また同日、ボリス・ジョンソン外相も閣僚を辞任することを発表。辞任の理由についてメイ首相に宛てた辞表の中で、これまで英国はEU加盟国として一部のEU指令などに反対してきたが、今後英国は変更を主張することもできずに受け入れる立場を取ろうとしているとして、「植民地の状態に向かいつつある」と表現、英国が独立して自国に適用される法を制定できなくなることへの懸念を示した。ジョンソン氏の後任には、保健・ソーシャルケア相だったジェレミー・ハント氏が選任された。同氏はEU離脱の是非を問う国民投票では残留を支持していた。

なお、欧州理事会のトゥスク常任議長はブレグジット交渉に関連して、英国側の主要閣僚の相次ぐ辞任を念頭に「政治家は時に現れ、そして時に去っていく者だ。しかし、彼らが生み出した問題・課題は人々に残されることになる」とのコメントを7月9日付のツイッターで明らかにし、英国の国内政治への不信感をあらわにした。

(木下裕之、前田篤穂、深谷薫)

(英国、EU)

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