FRB議長が議会証言、当面は緩やかな利上げが最善策との考え示す

(米国)

ニューヨーク発

2018年07月20日

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、議会への金融政策報告書の提出に併せて年2回行われる議会証言を、7月17日に下院の金融サービス委員会、18日に上院の銀行委員会において、それぞれ行った。

冒頭でパウエル議長は米国経済全般の現状について、「力強く推移する雇用市場に沿って、2018年はこれまでのところ堅調なペースで成長」し、「最新のデータによると、第2四半期の実質GDP成長率も第1四半期(年率2.0%)よりかなり高かったとみられる」と、好調さを強調した。物価上昇については、「インフレ率は、長年にわたって連邦公開市場委員会(FOMC)の目標である2%を下回ってきたが、最近はその水準に近づいて」おり、この「状態が保たれることを目指して、引き続き動向を注視していく」とした。

パウエル議長は先行きについて、「適切な金融政策運営によって、今後数年間、雇用市場は力強く推移し続け、インフレ率は2%近くにとどまると予想している」とした。一方で、貿易紛争の影響について、トランプ政権が言うように「(結果として)関税が広く引き下げられるのであれば、経済にとっては良いこと」としつつ、「一般的に、関税を含む参入障壁を設けてこなかった国は、より成長が加速し、所得や生産性も高かった。保護主義的な方向に向かった国はより状況が悪化した。これは、経験上の事実だ」とした。また、「具体的な数字にはまだ表れていないが、設備投資計画を当面、先延ばしする検討が始まっているといった懸念の声も聞いている」と指摘した。

今後の金融政策については、同議長は「力強い雇用市場に加えて、FOMCの目標に近いインフレ率、将来の見通しに対するリスクもおおむねバランスが取れていることから、今のところFOMCは、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利を緩やかに引き上げていくことが最善の方法」との考えを示した。

米投資会社オークブルック・インベストメンツの共同最高投資責任者であるピーター・ジャンコフスキス氏は、パウエル議長は「貿易(紛争の)動向を注視している」とみられ、市場参加者は「もしFOMCが(景気が腰折れする)危険の兆候をみた場合、利上げペースを緩和するかもしれないシグナル」とみるだろう、と述べた(ロイター7月17日)。

(権田直)

(米国)

ビジネス短信 c6183a44f387bb3b