ジョージア~ロシア間の物流インフラを再構築へ

(ジョージア、ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年07月02日

ロシア・ジョージア国境のベルフヌィ・ラルス(ロシア・北オセチア共和国)で、同国境初の物流ターミナルが稼働した。6月26日にジョージアの地元メディアが報じた。同国境はジョージアの首都トビリシとロシアのカフカス連邦管区の中心都市ウラジカフカスを結ぶ幹線道路上にある。この道路は俗に「ジョージア軍用道路」と呼ばれ、ロシアとジョージアを結ぶ唯一の陸上輸送路だ。

同ターミナルは、英国(実体上はアゼルバイジャン)企業のマーフィー・シッピングが建設、運営する。現時点での事業投資額は3,000万~4,000万ドルで、同国境のジョージア側(カズベキ)にも同様のターミナルを建設中。総事業費は5億6,000万ドルで、投資回収期間は5~10年。同社ジョージア事務所代表のアナル・アリエフ氏によると、ターミナルには分析設備やホテル、駐車場、洗車場などが付属しており、今後、ジョージアと周辺国国境12カ所に物流ターミナルの建設を予定しているという。

2008年に領土紛争で関係が悪化したジョージアとロシア間で、物流や人の流れを再構築する流れが目立っている。2018年5月24日にはチェコの首都プラハで、ジョージア、ロシア両政府代表による両国間の貿易・経済・輸送分野での会合が開催された。ジョージア軍用道路が天災などで利用不可の場合に限り、ジョージアから事実上、独立状態にあるアブハジア、南オセチアの両共和国を経由し、ロシアへ抜ける輸送路(現在は封鎖中)を使用可能とすることで合意した。ジョージア軍用道路はコーカサス山脈を越えるため、大雨や降雪による通行止めが頻発し、安定的な輸送が妨げられていたことから、ジョージアを経由してロシアへ貨物を輸出するアルメニアも、この合意を歓迎している。

鉄道分野ではロシアとアゼルバイジャンの合弁企業アズルストランスが6月22日、2017年10月に開通したバクー(アゼルバイジャン)~トビリシ~カルス(BTK)鉄道経由でロシア産穀物のトルコ向け輸送を開始した。民間航空分野(注)も、2018年に入りトビリシ~カザン(沿ボルガ連邦管区)、バトゥミ(ジョージア西部、黒海沿岸)~ロストフ・ナ・ドヌー(南連邦管区)間で定期便の就航が開始されている。

政治面では対立が続くジョージアとロシアだが、経済面では交流が拡大している。2018年第1四半期にジョージアを訪問したロシア人観光客は前年同期比3倍の35万人。貿易額は2018年1~5月は24.5%増の5億4,820万ドル(シェア11.2%、ロシアはトルコに次ぐ2位)。(ジョージア特産の)ワインのロシア向け輸出も38%増となった。

写真 ジョージア軍用道路(ジェトロ撮影)

(注)2008年8月に両国間の紛争により両国間の定期便の運航が停止。2010年8月に直行便の運航が再開したものの、2014年9月まではチャーター便のみが運航していた。

(高橋淳)

(ジョージア、ロシア)

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