中銀総裁、大統領への報告で住宅ローン過熱に警鐘

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年07月23日

ロシア中央銀行のエリビラ・ナビウリナ総裁は7月17日、プーチン大統領と会談し、2018年上半期の中銀の取り組みの報告を行った。報告の中で同総裁は、中銀の取り組むべき課題として、過熱する住宅ローン市場の監督や中小企業向け融資促進などを挙げた。

ナビウリナ総裁によると、6月のロシア経済全体の貸付残高(注)が前年同月比8.5%増だったのに対し、うち個人向けは18.9%の高い伸びとなり、特に住宅ローンが22.4%増と一層高くなっている。これまで、個人向けは消費者ローンが主流だったが、近年、住宅ローンの貸し付けが急増している。2013年時点で住宅ローン利用者は全体の27%だったのが、現在は44%を占める。同総裁は「(44%という)数字は十分に高く、『バブル(経済)』に陥るのを防ぐため、住宅ローンの内容(質)を注意深く見守る必要がある」と、プーチン大統領に述べた。

若い世帯への良質な住宅の提供はプーチン政権の政策目標となっており(2018年2月22日付地域・分析レポート参照)、中銀は政策金利を調整し、インフレ率が年4%以内に収まるよう誘導している。ナビウリナ総裁は、現時点の市中金利は9.56%で歴史的な低金利傾向が続く一方、(政策目標達成のため)さらなる政策金利の引き下げの可能性にも言及した。中銀は政権の政策目標達成のため、国民が住宅ローンを利用しやすい金融環境を創出しつつ、バブルを警戒する難しいかじ取りを強いられている。

企業向けの貸し付けについては、中小企業の発展に主眼を置く。中銀が行う規制や準備金積立制度を動員し、市中銀行の中小企業の生産拡大や投資事業向け融資に、採算性が確保されるようにする。その一方で、実態のない取引向けの融資は規制する方針を打ち出している。

このほか同総裁は、広大な土地に集落が点在するロシア極東で金融サービスを広く提供するため、金融機関による移動窓口の設置やインターネットバンキングの利用、金融機関や通信事業者と連携した生体認証の利用を推進することを、大統領に報告している。

(注)非金融機関および個人に対するもの。

(市谷恵子、高橋淳)

(ロシア)

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