離脱後のEUとの将来関係交渉に向け白書を発表

(英国)

ロンドン発

2018年07月13日

7月12日、英国政府はEU離脱(ブレグジット)後のEUとの将来関係に関する提案の詳細を示した白書を発表した。テレーザ・メイ首相は6日に首相公式別邸(チェッカーズ)で閣議を開催し、全閣僚の合意を取り付けた上で、「物品に関する自由貿易圏」の確立を提案の核に据える交渉方針を発表(2018年7月10日記事参照)、白書を基にEUと交渉を進めるとしている。

白書によると、EUとの経済パートナーシップについては、英国・EU間で摩擦のない貿易を実現するのに必要な範囲で、農水産品を含む物品に関して自由貿易圏を確立し、共通規則を適用する。他方、サービス・投資、eコマースを含むデジタルの分野では現行水準の市場アクセスを維持しないとした。エネルギー、輸送、民事司法協力の分野では社会経済的な協力関係の構築を提案している。

物品貿易については、通関円滑化のための取り決めを段階的に導入することで、実質的に英国とEUが統合された1つの関税地域であるかのように通関検査をなくすことを提案。英国・EU間で関税や数量割り当て、原産地規則に係る所定の条件をなくすことが盛り込まれた。さらに、EUを仕向け地とする物品が英国に輸入された際は、EU関税の徴収や申告など手続きを代行することで、英国とEU間の通関手続きのない貿易を維持するとした。また、英国における輸入時点で仕向け地が英国かEUか確実に判断できない場合は、英国・EUのいずれか高い方の関税を賦課し、後に低い方の関税が該当すると認められた場合には、英国政府が差額を払い戻すスキームを設けるとしている。

白書に関して、欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は精査中だとしつつ、「EUが提案しているのは、野心的な自由貿易協定(FTA)と強固な安全保障パートナーシップを含む広範囲の課題における効果的な協力。交渉を楽しみにしている」とコメント。また、英国産業連盟(CBI)のキャロリン・フェアバーン事務局長は「白書は、国民投票以降ビジネス界が強調してきたことを反映している。この方向性を歓迎しており、将来にわたり雇用と投資を守ることが交渉に携わる双方を(良い方向に)導く星となる」と述べた。

(木下裕之)

(英国)

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