テキサス州知事、大統領に鉄鋼などへの関税措置再検討を要請

(米国)

ヒューストン発

2018年07月03日

テキサス州のグレッグ・アボット知事は6月28日、トランプ大統領宛てに出した書簡において、1962年通商拡大法232条により新たに鉄鋼、アルミ二ウム製品、その他の品目に賦課される関税が、テキサス州および全米の今後の経済成長に脅威をもたらすことを懸念し、全米の産業界に意図しない悪影響が及ぶことがないよう、トランプ大統領に関税措置の再検討を要請した。

同知事は書簡で、具体的に次の点に言及している。

  • テキサス州が2017年に輸入した鉄鋼およびアルミ二ウムは他州の2倍以上の83億ドルに上っており、石油ガスの探査・生産のための坑井掘削、パイプラインその他施設の建設およびメンテナンスに用いられているが、これらの建設などは米国内で製造していない特定の鉄鋼製品にかなり依存しているため、複数の専門家が、新関税措置がシェール層の坑井仕上げおよび液化天然ガス(LNG)生産ラインの建設コストを劇的に押し上げるとみている。
  • テキサス州および米国は第2シェールブームへの移行期にあり、2018年5月には原油生産量が日量1,050万バレルに達し、年末に米国はロシアをしのぎ世界一の石油生産国になろうとしている。また、テキサス州パーミアン盆地の原油生産能力はロシアやサウジアラビアを除くいかなる国よりも大きいといわれているが、新関税措置が石油ガスの生産コストを押し上げ続ければ、米国がエネルギー大国を目指す上で大きな妨げとなる。
  • テキサス州では50万人近くの労働者が鉄鋼・アルミ製品を利用した生産に関わっているが、その製造に携わるのは7,600人にすぎない。また、テキサス州の石油ガスの探査・生産だけで22万5,000人の雇用を創出しているが、これは全米の鉄鋼・アルミ生産が生む雇用14万人の約2倍に相当する。エコノミストの試算では、新関税による鉄鋼・アルミの1人の雇用維持のために1~1.5人の石油ガスの雇用を失うことになる。
  • 新関税措置の導入により、2018年初夏だけで外国製品に新たにかかる関税額は約500億ドル。また、テキサス州は中国に対して綿花、ソルガム、牛肉などの農産品を含む80億ドル相当を2017年度に輸出している。さらに、半導体関連製品も中国で組み立てなどの後、米国に再輸入しているので、米国の半導体メーカーが高関税の支払いに耐えられなくなる。

(中川直人)

(米国)

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