観光や投資誘致のためビザ制度を改革

(アラブ首長国連邦)

ドバイ発

2018年07月04日

アラブ首長国連邦(UAE)政府は6月13日、経済の競争力向上のため、ビザ制度に関する幾つかの大きな変更を認可した。主な変更点は以下のとおり。

  • 保証金制度の廃止:労働災害時の保証金や母国への帰国チケット代、退職金などのために企業は従業員1人当たり保証金3,000ディルハム(約9万円、1ディルハム=約30円)を銀行に預けなければならなかったが、それを廃止し、代わりに従業員1人当たりの保険料年60ディルハムの保険への加入を義務化。
  • 6カ月間の求職者用ビザの導入。
  • 48時間までのトランジットビザの無料化。50ディルハムで96時間まで滞在可。
  • 「非常に優秀」と認められた学生への卒業後の2年間の居住ビザ発行。
  • UAE国外に出なくてもビザの延長などの手続きを可能に。
  • 期限を超えて滞在してしまった外国人が自主的に国外に出た場合は、「入国禁止」としない。

また、UAE政府は、5月に外資100%での法人設立、投資家や専門職らへの10年間の居住ビザを認めることを決めており、観光や長期投資のさらなる促進に向けてUAEの魅力を高めるため、制度改革を進めている。

このビザ制度改革は、在UAE企業や経済にさまざまな好影響を与えると予測されている。まず、保証金の廃止により、総額約140億ディルハムと見込まれている企業が銀行に預けている保証金を、企業が自由に事業投資などに使えることになることと、1人当たりの雇用にかかるコストが下がることにより、雇用の拡大が見込まれることだ。

また、これまでは失職した外国人在住者は自国に帰るか、次の職が見つかるまで暫定的に観光ビザで滞在しビザの期限満了のたびに一度国外退去してから戻ることを繰り返すしかなかったが、求職者用ビザの導入により、そうしたコストをかけずに失職後も一定期間UAE国内に滞在できるようになった。UAEの失業率は1%台と低く、これまで企業は求める人材を国内で見つけられず、UAE国外在住者を採用し、渡航費などを負担してUAEに呼び寄せることも珍しくなかったが、今後は雇用者側にとっても求める人材をUAE国内で見つけやすくなる。

こうしたことから、今回のビザ制度改革は、海外来訪者の増加が見込まれる観光セクターやサービス産業など雇用者が比較的多いセクターを中心に歓迎されている。

(山本和美)

(アラブ首長国連邦)

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