航空機製造のボーイングとエンブラエルが新会社設立に合意

(ブラジル、米国)

サンパウロ発

2018年07月09日

世界的な航空機製造メーカーである米国のボーイングとブラジルのエンブラエルは7月5日、民間旅客機製造部門において中小型機市場をターゲットとした新会社設立などを主たる内容とする両者の協力に関する覚書を締結した。

新会社は、エンブラエルが従来保有していた、民間旅客機製造部門、防衛部門、小型ビジネスジェット部門のうち、民間旅客機部門を切り離し、ボーイングの出資を得て新会社にするとしている。新会社の価額は47億5,000万ドルと見積もられ、出資比率はボーイングが80%、エンブラエルが20%とされている。

エンブラエルが以前から保有する防衛部門と小型ビジネスジェット機部門については、新会社には移管されず引き続きエンブラエルが運営するとしているものの、将来的には軍用輸送機の製造に関しても新たな新会社の設立を図ることも表明している。

エンブラエルによると、今後は合意内容の検討をさらに深め、2018年内に正式な会社設立の提案を株主やブラジル政府に提出して承認を受けたいとしている(注)。また、新会社設立に当たっては、ブラジル、米国の競争政策当局に加え、本件に関連する国の競争政策当局の審査を経る必要があるため、新会社の設立は2019年末までと見込んでいる。

新会社設立の背景としては、大型・中型旅客機に競争力のあるボーイングと中小型旅客機に競争力のあるエンブラエルが協力関係を構築することにより、小型機から大型機までフルラインの航空機の製造とサービスを提供することが可能になることがあり、研究開発、マーケティング、製造などの面でシナジー(相乗効果)を発揮することにより、年間1億5,000万ドルのコスト削減を見込めるとしている。

(注)ブラジル政府は、エンブラエルの重要な決定事項について拒否権を有する株式、いわゆる「ゴールデン・シェア」を保有している。なおブラジル政府は、新会社に対する関与の余地は残すものの、新会社の「ゴールデン・シェア」は保有しない見込み。

(岩瀬恵一)

(ブラジル、米国)

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