5月のインフレ率は前月比2.1%と高水準続く

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2018年06月21日

国家統計センサス局(INDEC)は6月14日、5月の消費者物価指数上昇率(インフレ率)が前月比2.1%だったと発表した(表1参照)。前年同月比では26.3%と依然として漸増状況が続いている。2018年初より、アルゼンチン政府はインフレ率が5月から下降局面に入るとしてきたが、その見通しは不透明になっている。

表1 2018年5月の産業分野別インフレ率

政府としては、2019年の大統領選挙を視野に入れて、2018年上半期のうちに公共料金の「正常化」に向けて補助金削減を進め、下半期にはインフレ率を低めにすることで、年間のインフレターゲットである15%を目指してきた。しかし、4月下旬から5月上旬にかけて生じた自国通貨の急落によって、輸入品価格の値上げが生じている。例えば、当地日本食材店からは、通貨下落は商品の値段に直接影響するとともに、今後の下落分を見込んだ価格設定をせざるを得ない、といった声が聞かれる。

6月12日にアルゼンチン政府からIMFに提出された今後の経済金融政策に関する「実務覚書(Technical Memorandum of Understanding)」によれば、インフレターゲットをバンド制にして、2018年末には27%を軸に最大で上下5%のレンジを目標にしている(表2参照)。これは、先に政府から発表されていた2018年末のインフレターゲット15%を上方修正するもので、政府内でも先の通貨下落によって現実的な数値に修正せざる得ない状況となった。

表2 インフレターゲット(バンド制)

マクリ政権を取り巻く状況は引き続き厳しい。一連のインフレ率上昇に見合った給与引き上げを求めるべく、アルゼンチン労働総同盟(CGT)は6月25日にゼネストを予定している。6月15日の記者会見で、政府の経済政策を取り仕切るドゥホブネ財務相は、今後とも財政規律の構築とそれに伴うインフレ率の引き下げを目指すことを強調したが、当地メディアでは、6月のインフレ率見通しも前月比3%になる可能性があるなど、インフレ率をめぐる駆け引きはこれからも続く様相になっている。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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