ハンブルクでディーゼル車乗り入れ規制を実施

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2018年06月01日

ドイツ北部のハンブルク市は5月23日、5月31日以降、「ユーロ6」(乗用車を対象)および「ユーロVI」(大型トラックやバスなどの重量車を対象、注1)を満たさないディーゼル車の市内中心部2カ所の道路の走行を禁止する(注2)と発表した。公共交通機関として運行されるバスや居住者の自動車などは、走行禁止対象から除外される。

欧州委員会は、ドイツ国内28の都市圏でEUの定めた規制値を超える窒素酸化物(NOx)が検出されたことを受け、改善に向けた対策をドイツ政府に対して強く求めていた(2018年2月20日記事参照)ほか、国内各都市でもEUの規制値を順守すべく、排ガスが一定水準を超えるディーゼル車の市街地乗り入れ禁止を求める動きがあった。

ドイツの連邦行政裁判所は2018年2月に、デュッセルドルフとシュツットガルトに対してディーゼル車乗り入れ規制などの実施を求めていた環境団体の訴えを支持する判決を出していた。ハンブルク市では、2017年6月に独自の空気汚染対策プランを発表しており、今回のディーゼル車規制の実施を示唆していたが、連邦行政裁判所の判決後、実際に走行禁止措置を実施する事例は初めてとなる。

一方、今回の決定の有効性に疑問を呈する見方もある。現状の規制では、乗入禁止の対象か否かを視覚的に判断するためのラベルの導入が義務付けられておらず、実際に乗り入れ禁止対象車両を取り締まることは難しいとされる。また、対象となる2つの道路の近くに市の窒素酸化物の計測地点があることから、測定値が下振れし、空気汚染の改善に向けた根源的な対策とはいえないなどの批判もある。

自動車業界は禁止区間の拡大や他都市への波及を警戒

ドイツ自動車産業連合会(VDA)は5月23日、「走行禁止より、良い対策がある」とし、今回の決定に対し否定的な見方を示すとともに、走行禁止区間の拡大や他の都市に同様の措置が広がることに警戒を強めている。自動車産業界はハンブルク市と協力し、電気自動車の普及促進や信号アシストシステムの導入による効率的な交通の流れの実現など、排ガス低減に向けた取り組みを実施していると強調。国内複数の都市でも同様の取り組みを行っており、今後、国内各都市での排ガスの測定値は走行禁止を実施しなくても改善していくとしている。

(注1)自動車による大気汚染物質の排出規制値を定めたEUの排出基準。

(注2)うち1つの道路は重量車のみが走行禁止対象。

(ベアナデット・マイヤー、森悠介)

(ドイツ)

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