公共料金差し戻し法案にマクリ大統領が拒否権発動

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2018年06月11日

アルゼンチン上院は5月31日午前、37対30の投票結果(賛成多数)によって公共料金差し戻し法案を可決した。同日午後、マクリ大統領は以前から公言していたとおり、同法案に拒否権(政令499/2018号)を発動した。それにより、同法案は公布できない事態となっている。

マクリ政権は少数与党であるため、投票前日まで野党・正義党(PJ)などの議員に向けて翻意を促すなどの努力を重ねたが、結実までには至らなかった。法案には、アルゼンチン国民の約4割が生活する大ブエノスアイレス圏およびブエノスアイレス市における電気、ガス、水道といった公共料金を2017年11月時点の金額まで差し戻すこと、その後の引き上げ率は消費者物価上昇率を上回らないことなどが含まれている。

政府は、財政規律を政権運営の優先課題としており、プライマリーバランス(基礎的財政収支)目標を2018年にマイナス2.7%、2019年には当初のマイナス2.2%をマイナス1.3%とするなど強い決意を表明している。また、今般枠組み合意に至ったIMFとの融資協議でも、財政規律がテーマになった。

もしも、公共料金差し戻し法案が公布され、再び公共料金に補助金が投入されることになると、39億ドル相当の歳出増が見込まれる。マルコス・ペニャ首相は、野党が補填(ほてん)財源を示していないことを指摘し、政権内からは議会の対応を無責任と批判する声が出ている。なお、マーケットは拒否権発動を織り込み済みとしており、特段の反応を示してはいない。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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