公務員賃金7%引き上げで交渉妥結

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2018年06月19日

アヤンダ・ドロドロ行政サービス・管理相は6月8日、2018/2019年度(2018年4月~2019年3月)の公務員の最低賃金を、前年のインフレ率5.5%に1.5ポイントを上乗せし、7.0%引き上げると発表した(注)。また、2019/2020年度、2020/2021年度はインフレ率プラス1.0ポイントの賃上げとすることも約束した。

政府と労働組合の賃金交渉が続いてきたが、公務員によるストライキの回避を優先して、労働組合からの賃上げ要求を飲んだかたちだ。最低賃金は4月にさかのぼって適用され、130万人の公務員に影響が及ぶ見込みだ。他方で、英国の調査会社キャピタル・エコノミクスのジョン・アシュボーン・エコノミストは、「2月に発表された政府予算案で、公務員賃金は7%上昇と見込まれていた。今回の賃上げ発表はこれに即したものであり、追加の財源確保を必要とするものではない」としている。

賃上げ要求の動きが活発

賃上げをめぐる労働組合の動きが活発だ。5月28日、国家最低賃金法案が下院で賛成多数で可決された。同法案は最低賃金で就業する労働者に最低20ランド(約164円、1ランド=約8.2円)の時給と月額3,500ランドの給与を保証するもので、現在、上院に相当する全国州評議会で審議中。可決されれば、大統領の承認をもって公布・施行となる。しかし、4月には南ア労働組合連合(SAFTU)と南ア金属労働組合(NUMSA)が同法案に対して、時給20ランドでは不十分だとして、全国で数万人規模のデモを実施している。

ほかにも主要労働組合が、国営電力公社エスコムの労働者への9~15%の賃上げを求めているほか、鉱業界でも南ア鉱山労働者・建設組合連合(AMCU)が、2018年の鉱山労働者の月額最低賃金を、前年の7,662ランドから1万2,500ランドに引き上げるよう求める構えだ。南アでは2012年にマリカナ鉱山での労働争議により数十人の労働者が殺害されて以降、労働組合の発言力は増しており、人件費の上昇は企業にとってのコスト増の大きな要因となっている。

(注)給与レベル1-7の公務員に適用。レベル8-10はインフレ率プラス1ポイント、レベル11-12はインフレ率プラス0.5ポイントが適用(2018/2019年度)。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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