タイで対応迫られるプラスチックごみと電子廃棄物

(タイ)

バンコク発

2018年06月15日

タイで現在、2つのごみ問題が注目されている。1つはビニール袋などのプラスチックごみ、もう1つは昨今輸入が急増している電子廃棄物だ。

5月28日にタイ南部のソンクラー県に打ち上げられ、その後に死亡したゴンドウクジラの胃の中から、大量のビニール袋が発見された。発見されたビニール袋の枚数は約80枚で、総重量8キロにも及んだ。海洋で発見されるプラスチックごみのほとんどが陸地で投棄され、それが海洋まで流れたといわれている。また、バンコクでたびたび発生する洪水も、投棄されたビニール袋が排水溝にたまったことが原因で引き起こされている。

さらに最近、懸念が強まっているのが、日本や欧州、その他のASEAN諸国から輸入が急増している電子廃棄物だ。5月には、バンコクに近いチャチェンサオ県で中国系の違法リサイクル業者が摘発された。また、タイの主要貿易港であるレムチャバン港において、日本から違法に輸入されようとしたパチンコ台のスクラップを積んだコンテナ貨物が見つかるなど、電子廃棄物の輸入は2018年に入って急増している。

背景にあるのは、中国政府による電子廃棄物などの輸入禁止措置だ。従来、日本や欧州などから電子廃棄物が中国に輸出されていた。しかし、中国での輸入禁止措置の導入により、一部の中国人業者が拠点をタイに移したことが要因だといわれている。

他方、タイ国内でもごみ問題に対する意識が少しずつ高まりをみせており、国連の世界環境デーだった6月5日には、タイ国内の20以上の企業や政府機関によって、プラスチックごみを2027年までに半減させる覚書が結ばれた。また、保健省医療局は同日、10月1日から国立病院において医薬品を入れるビニール袋の配布を取りやめることを公表した。電子廃棄物については、工業省が5月末から全国148カ所に及ぶ電子廃棄物処理場の一斉検査を実施しており、警察と連携の上、違法に電子廃棄物を扱う業者の摘発に乗り出している。

(阿部桂三)

(タイ)

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