深セン市の「中国版Airbnb」が経営危機の懸念

(中国)

広州発

2018年06月27日

深セン市の大手民泊企業「深セン市住百家発展」(以下、住百家)が経営危機にあると報じられている。中国でいち早く民泊事業に参入し、2016年には店頭市場「新三板」への上場を果たすなど急成長を遂げた。世界80カ国・800以上の都市で約30万件の物件を提供している。株主には中国の芸能人らも名前を連ね、中国メディアからは米民泊仲介サイトのエアビーアンドビーの(Airbnb)の中国版とも称されている。

新三板の登録取り消しも

6月15日付の上海証券報などでは、赤字が続いていることに加え、経営層を含む従業員が大勢離職していると報じられている。本家のAirbnbや国内最大手「途家」の成長などもあり、経営危機に陥っているとされる。住百家は6月15日付で一連の報道内容に反論を出している。

住百家は6月19日時点で2017年度の年次報告書を公表していない。規定の4月30日から2カ月以上遅れており、新三板での取引が停止されるとともに、中国の「国家企業信用情報公示システム」で「経営異常名簿」(注)に掲載されている。6月30日までに年次報告書が提出されない場合、新三板での登録が取り消される可能性があるという。

3年連続で赤字

住百家の業績をみると、2015年以降売上額は増加を続けているものの、純利益は一貫して大幅な赤字となっている(表参照)。2017年上半期の赤字額は5,824万元(約9億9,008万円、1元=約17円)と2015年、2016年を上回るペースで、通年でも赤字の可能性が極めて高い。赤字の要因は営業コストが年々増加していることが大きいとされる。

表 住百家の業績の推移

資金状況は悪化の可能性

加えて2017年には、現金および現金同等物も大幅に減少している。2015年、2016年の営業キャッシュフローは8,000万元以上の赤字だったが、いずれの年も1億3,000万元を超える投資を受けたこともあり、キャッシュフロー全体は大幅な黒字を保っていた。

2017年上半期は、既に借り入れにより2,900万元の流入があるにもかかわらず、現金および現金同等物が期初の1億1,197万1,364元から2,432万8,002元に減少、前期比でも約1,000万元少ない。直近で住百家が受けた大型融資は、2017年3月の海南航空の関係会社による1億元とされる。2017年下半期にはこの融資が流入しているとみられるが、その後大型融資を受けていないことから、現時点の資金状況は相当に悪化している可能性があるとみられている。

(注)期限内に年次報告書を提出しない、工商管理部門の要求する情報を公開しない、公開情報に真実の隠ぺい・虚偽がある、登録された住所・経営所在地と連絡が取れない場合、経営異常名簿に掲載される。

(河野円洋)

(中国)

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