国民投票から2年、進まぬEU離脱交渉に批判の声高まる

(英国)

ロンドン発

2018年06月28日

6月20日に「EU(離脱)法案」が英国議会を通過したが、アイルランドと北アイルランドとの国境管理やEU・英国間の通商・関税など、重要案件の交渉は進んでおらず、政府や議会を批判する声は一段と高まっている。

英国のEU離脱(ブレグジット)を決めた国民投票から丸2年がたった6月23日、ロンドンで離脱に反対する市民や活動家らによるデモが行われ、国民投票の再実施を訴えた。主催者の発表では、ブレグジット関連のデモとしては過去最高の10万人以上が参加した。主催団体の1つであるオープン・ブリテンのジェームズ・マグローリー代表は「ブレグジットによる混乱に対する国民の怒りがどれだけ強いかを政界に示すものだ」と大規模デモの成果を誇示する。

産業界では、6月21日に欧州航空機大手エアバスが英国への投資見直しや事業縮小の可能性を示唆した。加えて、英国で約8,000人を雇用するドイツのBMWも「国境でサプライチェーンが寸断されれば、われわれは英国で生産活動は行うことはできない」(「フィナンシャル・タイムズ」紙6月25日)とコメント。合意なき離脱が実現した場合、英国から撤退する可能性があると踏み込んだ。

国内外の経済団体からも発言が相次いでいる。国内メディアによると、英国産業連盟(CBI)など主要経済5団体は6月24日、メイ首相宛ての共同書簡で「不確実性を前に、ますます多くの企業が相当程度の事業を英国外に移転することを考えている」と指摘し、早急な対応を求めた。ドイツ産業連盟(BDI)は25日の声明で、合意なしの離脱に至る可能性が高いことを指摘。英国政府が早急に軌道修正し、関税同盟と単一市場にとどまるよう訴えている。

こうした産業界の声に対し、離脱強硬派の閣僚らは反論している。ジェレミー・ハント保健・ソーシャルケア相は24日のBBCの番組で、「われわれは極めて重要な局面にあり、最善の方法で離脱するために、メイ首相の下で団結する必要がある。企業がこうした脅しを行うことは実に不適切だ」と反論している。

6月28~29日には欧州理事会(EU首脳会議)が開催される。南北アイルランド国境問題など、離脱合意に向けた重要事項が協議される予定だが、明るい見通しはみえてこない。

(宮崎拓)

(英国)

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