フォードとVWが商用車開発などで戦略的提携

(米国、ドイツ)

ニューヨーク発

2018年06月27日

フォードは6月19日、フォルクスワーゲン(VW)との間で、戦略的提携に向けた覚書を取り交わした。両社は「世界中の顧客ニーズの変化により良く対応する」ため、商用車(注1)の共同開発のほか、複数の分野での協業を検討するとしている。ただし、今回の覚書に資本提携は含まれていない。

フォードのグローバル市場担当社長ジム・ファーリー氏は、今回の提携をビジネスの効率化に向けたてこ入れと位置付け、「競争力のある世界的な製品ポートフォリオを生み出す」ことを目指すと述べた。また、VWグループの戦略責任者トーマス・セドラン氏は「世界的な競争力を高める機会になる」と期待を寄せる。

好調な米国の商用車市場に積極対応

共同開発の対象となる商用車の需要は世界的に伸びており、国際自動車工業連合会(OICA)によると、2017年の世界の販売台数は前年比6.4%増で、金融危機以降では2010年に次ぐ伸び率となった。とりわけ米国では、乗用車(注2)の販売台数が落ち込む中、商用車は前年比4.5%増で、増加台数では中国に次ぎ、成長が期待されている。こうした中、VWは3月のニューヨーク国際オートショーでピックアップトラックのコンセプトカー「タノーク」を発表したほか、米大手トラックメーカーのナビスターと電動トラックを共同開発、同社の買収を検討していることを明らかにするなど、これまで手薄だった米国の商用車市場参入に積極的な姿勢を示している。またピックアップトラックのシェアで全米首位のフォードは、2020年までに北米市場での商用車の割合を全販売台数の約9割にまで引き上げる方針だ。

また、自動車メーカーは電気自動車(EV)開発にかかる費用の分担を模索しており、今回の提携には、EV開発での協業も入るとみられている。VWは3月、2025年までに80モデルのEVを販売すると発表し、フォードも1月、電動化を目玉とする経営戦略の中で、ピックアップトラック「F150」のハイブリッド化を含め、2022年までに世界市場で40モデルに電動車両を投入すると発表した。なおフォードは、補助金制度などでEV需要が伸びる中国市場でのシェア拡大に注力しており、こうした点も同市場に強いVWとの提携の背景にあるとみられている(「USAトゥデー」紙電子版6月20日)。

(注1)OICAの規定では、バン、バス、トラックを含む貨物運搬に利用される車両のこと。

(注2)OICAの規定では、4輪以上の自動車で、人の乗用に利用される車両のこと。シート数は運転席を除き8席以下に限る。2017年の全米販売台数は前年比11.3%減。

(大原典子)

(米国、ドイツ)

ビジネス短信 aca6fedbbd020fdd