改正労働法の施行に伴い新規提訴件数が減少

(ブラジル)

サンパウロ発

2018年06月06日

ブラジル高等労働裁判所の資料によると、一審となる労働裁判所支部の新規提訴件数は、2017年11月の改正労働法施行を契機に減少している。改正労働法が施行された2017年11月に29万903件だった新規提訴件数は、12月に8万5,354件、1月に9万573件、2月に11万9,622件と減少した(図参照)。2018年1~2月では前年同期比45.0%減となった。

図 労働裁判所支部の月別新規提訴受け付け件数推移

2017年11月施行改正労働法の影響

提訴件数減少の理由は、訴える労働者側に一方的なかたちで与えられている有利な条件が喪失したためだ。当地の労働法を専門とする弁護士によると、以前の労働法の下では提訴する労働者側が敗訴しても、裁判費用、さらには勝訴した企業側の弁護費用を負担する必要がなく、また、悪意を持って裁判に欠席するなど審理の妨害行為をしても罰則などの規定がなかった。しかし、今回の改正労働法により、敗訴した場合に勝訴側の弁護士費用や裁判費用を負担する義務が生じるほか、悪意を持って裁判に欠席するなどの行為に罰金が科されるようになった。

改正労働法では、労使間の合意事項である協約が労働法に優先される項目を認めたほか、1カ月休暇の分割の容認、合意解雇制度の導入、断続的労働の導入、パートタイム労働に関する改正など多岐にわたる項目が変更された。ブラジル雇用労働省(MTE)の統計をみると、11月の施行後、合意解雇、断続的労働、パートタイムによる雇用制度の利用件数は着実に増加している(表参照)。

表 改正労働法に伴い導入、改正された制度の利用件数推移

まだ一部の改正内容は、労働裁判所判事がどのような判断をするのか不透明な部分があり、具体的な判例がみられるまで改正点を実際に運用することに二の足を踏む企業も多い。しかし、改正労働法により、新規提訴件数の減少や新たな制度の利用の実績が増えている事実は、プラス評価の材料といえる。

(二宮康史)

(ブラジル)

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