FOMC、政策金利を3カ月ぶりに引き上げ

(米国)

ニューヨーク発

2018年06月15日

米連邦準備制度理事会(FRB)は6月12~13日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を、1.50~1.75%から1.75~2.00%に引き上げることを決定した。利上げは2018年3月(0.25ポイント)以来3カ月ぶりで、2018年に入って2回目。今回の決定は全会一致だった。

FOMCメンバーによるFFレートの見通し(15人の委員メンバーの中央値)は、2018年、2019年がそれぞれ2.375%、3.125%と、いずれも3月会合時点から0.25ポイントずつ引き上げられ、2019年末以降は長期見通し(2.875%)の水準を上回るとされた。1回当たりの利上げ幅を0.25ポイントとして、利上げ回数の見通しは、2018年は(3月と6月を含めて)3回から4回へ引き上げられた一方で、2019年は3回と維持、2020年は2回から1回へ引き下げられており、利上げペースが前倒しされる想定となっている(図参照)。

図 FOMCメンバーが予想する将来のFF金利水準

「フォワード・ガイダンス」の記述を簡略化

FOMC声明は米国経済全般の現状判断について、「労働市場が引き続き力強さを増し、堅調なペースで拡大を続けた」とし、「緩やかなペース」から「堅調なペース」へと上方修正した。

また、ジェローム・パウエル議長が簡素化を示唆していた、将来の政策金利の指針「フォワード・ガイダンス」は大幅に削除された。これまでは「FFレートは、当面、長期的に到達すると期待される水準を下回って推移することが予想される」といった文言が記載されていたが、パウエル議長は「2019年以降、FFレートは正常と考えられる長期水準の範囲内に到達すると予想されるため、(この部分を)声明文から削除する適切な時期と考えた」と述べた。一方で、「こうした変更は、金融政策に対する見解の変更を示すものではない」としている。

同時に発表された2018年から2020年にかけての実質GDP成長率、失業率、物価上昇率の予想中央値は、2018年の成長率が2.8%と前回から0.1ポイント引き上げられ、2018~2020年の失業率はそれぞれ0.1~0.2ポイント引き下げられた。物価上昇率は、2018年の個人消費支出デフレーター(コアPCE)が2.0%と、前回から0.1ポイント引き上げられた。

フィッシャー・インベストメンツ調査担当シニアバイスプレジデントのアーロン・アンダーソン氏は「現時点で、FRBによる緩やかな利上げとバランスシート(保有資産)の縮小といった政策指針は揺るぎないもの」となっており、よほど急激な経済成長やインフレ軌道の変化がない限り、変わらないだろうと指摘した(ロイター6月13日)。

なお、パウエル議長は記者会見において、これまで四半期(3・6・9・12月)ごとに行われていたFOMC終了後の議長記者会見は、2019年1月以降、FOMC(年8回)ごとに行う方針を示した。コミュニケーション改善のために行うもので、「将来の利上げペースやタイミングについて何らか示唆を与えるものではない」と説明した。

(権田直)

(米国)

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