改正鉱業憲章のパブコメに関し、鉱業界からは懸念の声

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2018年06月27日

グウェデ・マンタシェ鉱物資源相は6月15日、鉱業憲章の改正に関するパブリックコメントの詳細を発表した。鉱業憲章は、アパルトヘイト(人種隔離政策)により歴史的に不利益を被ってきた南アフリカ共和国国民(特に黒人)に対して鉱山権益の移転を促す目的で2002年に制定され、2010年の改正で鉱山権益の黒人株式所有率(エンパワーメントステータス)を26%とすることが定められた。

2017年6月にモセベンジ・ズワネ前鉱物資源相が発表した3回目の改正では、26%から30%に引き上げるとともに、比率の永続的維持の義務化が提案されたことが大きな波紋を呼び、業界団体である鉱業会議所(現:鉱物評議会)は裁判所に緊急差し止めを求めていた(2017年7月19日記事参照)。高等裁判所は2018年4月9日、鉱業会議所側が訴えていた黒人所有率の永続維持は義務ではないとする主張を支持する判決を下している。今回の改正案の主なポイントは次のとおり。

  • 改正鉱業憲章の施行後、5年以内に黒人所有率を26%から30%への引き上げを義務化(2017年発表時は1年以内の引き上げ)。
  • 黒人所有率30%を5年以内にいったん達成すれば、その後、永続維持義務は課せられない(達成後、黒人株式所有者の非黒人への株式売却により比率が下がる可能性を容認)。
  • 利払い前・税引き前・減価償却前利益(EBITDA)の1%を黒人に優先的に配当。
  • 取締役の50%以上を黒人とし、そのうち20%以上を黒人女性とする。
  • 調達品の70%を国産品とし、そのうち21%が黒人企業(黒人株式所有率51%以上)、5%が黒人女性・若手企業、44%を「BEE(黒人経済力強化政策)順守企業(BEEレベル4以上かつ黒人株式所有率26%以上)」からの調達とする。

鉱物評議会は6月17日に声明を出し、「(黒人所有率の)30%への引き上げは支持するものの、合意できない事項が複数あり、これらは鉱業界の競争力を阻害するものだ」と懸念を示し、「シリル・ラマポーザ大統領が4月に発表した今後5年間で1,000億ドルの外国投資を呼び込むという意向に相反するものだ」と訴えている。また、鉱山向け機器などを納入する日系企業からも「新しい基準の順守は困難」と戸惑いの声が聞こえる。パブリックコメントは7月27日に締め切られる予定。また、マンタシェ鉱物資源相は「さらなる議論を行うため、政府は7月8~9日に鉱業憲章サミットの実施を計画している」と発表している。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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