企業の成長・変革を図る「行動計画に関する法案」を閣議決定

(フランス)

パリ発

2018年06月28日

フランス政府は6月18日、経済改革の一環として「企業の成長・変革のための行動計画に関する法案」(通称:PACTE法案)を閣議決定した。2018年9月から国会での審議を開始する。同法案には、中小企業の成長を後押しする規制緩和、戦略的企業への外資規制強化、イノベーション強化など幅広い施策が盛り込まれている。

法案の主な内容は次のとおり。

  • 企業設立のための手続きを簡素化する。企業関連の法的情報を一元化する電子登録簿を創設し、2021年までにオンラインによるワンストップ窓口を導入する。
  • 従業員数に応じて企業に課される義務について、従業員数の閾値(いきち)を11人、50人、250人の3つに簡素化する。しかし、身体障害者雇用については、これに限らず、従業員数が20人に達する企業は義務を負う。
  • 中小企業の輸出を促進、地方ごとに異なる政策を打ち出せるよう各地方にワンストップ窓口「フランス輸出チーム」を開設する。
  • 法定監査が義務付けられる企業の売上高を310万ユーロからEUレベルの「800万ユーロ」に引き上げる。
  • 250人未満の企業に対する従業員への利益分配(アンテレッスマン)および50人未満の企業の利益参加(パルティシパシオン、注)に係る20%の固定社会保障負担金を免除する。利益分配は任意、利益参加は50人以上の企業に義務付けられている。
  • 民法を改正し、企業の目的として利益の追求だけでなく、社会的責任や環境的配慮などの要素を考慮に入れることを求める。
  • 外資規制の対象となる戦略的分野に人工知能(AI)、宇宙、データストレージ、半導体などを追加する。同措置は、フィリップ首相が2月16日に発表(2018年3月6日記事参照)。
  • 国が保有する宝くじ公社、パリ空港公団、エネルギーの大手エンジー株式の売却を可能にし、その売却益をイノベーションの強化を支援する基金に繰り入れる。年間2億~2億5,000万ユーロの基金の収益をAI、ナノエレクトロニクスなどイノベーション支援に活用、支援の3分の1はスタートアップ企業に向ける。

「レゼコー」紙(2018年6月18日)は、経済・財務省が同法によりフランスのGDP成長率が長期的には1ポイント、2025年には0.32ポイント引き上げられると試算、と報道している。

(注)利益を従業員に割り当てる措置。従業員数50人以上の企業に義務付けられ、割り当ての計算式は法律で定められている。雇用主と従業員代表との協定で従業員により有利な内容とすることも可能。

(奥山直子)

(フランス)

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