政府、ダイムラーに77万台のリコールを命令

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2018年06月15日

ドイツ連邦政府は6月11日、自動車大手のダイムラーに対し、排ガスを不正に操作する装置を搭載しているとして、同社のディーゼル車3車種のリコール(回収・修理)を命じた。該当車種は小型商用車の「ビトー(Vito)」と、同社の主力モデルであるスポーツ用多目的車(SUV)「GLC 220d」とセダン「C 220d」で、リコールの規模は欧州全体で77万4,000台(うちドイツ国内23万8,000台)に達する。

連邦交通・デジタルインフラ省のプレスリリースによると、ダイムラーは今回の命令に対し、関係当局と協力しつつ、対象車種の該当するソフトウエアの無料アップデートを実施し、早急かつ透明性をもって対応するという。2015年9月にフォルクスワーゲン(VW)による排ガス不正ソフト問題が発覚して以来、国内自動車産業やディーゼル車への批判的な見方が増える中、こうした機運にさらに拍車を掛けそうだ。

実際、ディーゼル車の新規登録台数は近年、減少傾向にある(2018年2月20日記事参照)。ドイツ自動車産業連合会(VDA)の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2018年1~5月の新規登録台数におけるディーゼル車のシェアは32.3%で、前年同期(41.9%)と比較して大幅に減少した。さらに、EUが定める規制値を超える窒素酸化物(NOx)が国内複数の都市で検出されたことを受け、ハンブルク市では市内一部への旧型ディーゼル車の乗り入れを禁止するなど、具体的な規制を講じる地方自治体も出てきている(2018年6月1日記事参照)。

今回の命令を受け、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)のエリック・シュバイツァー会長は「(今回のような)ディーゼル関連の不正事件やディーゼル車の乗り入れ規制は、ドイツ経済にとって大きな不安要素となる」とのコメントを発表。「ディーゼル車の価値の下落や乗り入れ禁止は、中堅・中小企業にとって大きな負担となる」とし、関連する損失が5億ユーロ以上に達するとの見方を示した。さらに、「この問題は全ての関係者が真剣に捉えるべき」として、迅速かつ徹底した解明を通じた市場の信頼回復に努める必要性を指摘した。

(ベアナデット・マイヤー、森悠介)

(ドイツ)

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