EU離脱法案の上院修正案、下院でほぼ否決され再度上院へ

(英国)

ロンドン発

2018年06月15日

下院は6月12~13日、英国の「EU(離脱)法案」について、上院で可決された15件の修正案(2018年5月14日記事参照)の審議を行い、14件の修正案を否決した。うち5件は下院が代替の修正案を提案、同法案は18日に上院に戻されることになった。上院で再度審議が行われ、下院の修正案が否決されるか、上院で代替の修正案が出されれば、同法案は再び下院に戻されることになる。

なお、上院で可決された修正案のうち、同法案がEU法を英国法にすることおよびEU機関への参加の継続を妨げないとする案は下院も賛成しており投票は行われなかった。否決された修正案は、EU離脱後も欧州経済領域(EEA)への残留を求めるものや、EU関税同盟にとどまるための政府の取り組みの議会報告を義務付けるもの、EUとの最終合意に対し議会立法による承認を必要とするものなど、いずれもEU単一市場・関税同盟からの離脱を表明している政府にとっては痛手となるものだった。

各紙報道によると、12日の下院での採決に先立ち、テレーザ・メイ首相は修正案可決に票を投じる造反の可能性のある親EU派の保守党議員15人と協議し、EUとの最終合意に対して議員に権限を与える新たな修正を追加することを約束し譲歩したとされる。一方、EU残留派のフィリップ・リー保守党議員は12日朝、上院の修正案が否決されることによって議会の役割を制限しようとする政府の試みに抗議するとして、司法省政務次官の辞任を表明したが、EUとの最終合意で議会の発言権を強化する修正案の投票は2人の造反(修正案への賛成)にとどまり、324対298の26票差で否決された。

13日には、EEAへの残留を求める修正案の審議が行われた。最大野党である労働党の執行部はEEAへの残留に反対の立場で議員に投票の棄権を呼び掛かけており、同修正案は327対126で否決された。しかし、90人の労働党議員が投票し、うち15人が修正案に反対。ローラ・スミス影の内閣府大臣を含む投票に参加した6人が影の政府の要職を辞任した。

(鵜澤聡)

(英国)

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