EEA残留などを求める修正案を上院が可決

(英国)

ロンドン発

2018年05月14日

上院は5月8日、英国の「EU(離脱)法案」について、英国のEU離脱後も欧州経済領域(EEA)にとどまることを求める修正案を可決した。反対派は交渉の最終段階で議論する機会がある問題であり、(修正案を可決することで)政府の交渉上の立場を今、弱体化すべきではないと主張。他方で、賛成派はEEAへの小売り、観光、交通、通信や金融サービスなどのサービスの輸出を維持することを主張し、投票数は賛成247、反対218となった。

同日にはEUからの離脱日を2019年3月29日とする文言を削除する修正案も311対233の賛成多数で可決されている。下院でようやく決まったことを変えるべきではないとする政府の主張を、離脱日延長の可能性も踏まえ、特定の日付を法案に記入すべきでないとする上院内の主張が上回ったかたちだ。また、EUの諸機関にとどまるべきとする修正案も可決されている。

4月18日には上院で、EU関税同盟にとどまるための政府の取り組みの議会報告を義務付ける修正案が可決(2018年4月24日記事参照)されており、その後も数回の審議を経て、複数の修正案が可決されている。

「ガーディアン」紙(5月8日)によると、法案は上院で14回修正されており、下院の与党議員からは、上院に対してブレグジットの進捗に水を差すとして懸念を示す声も聞かれる。「デイリーメール」紙(5月10日)によると、下院の院内総務を務めるアンドレア・レッドソム議員は、国民の投票によって選出された下院の決定を妨げることは、(公選制ではない貴族によって構成される)上院の仕事ではないとして不快感を示した。また、2001~2003年まで保守党の党首を務めたイアン・ダンカン・スミス下院議員は、上院に対し「徹底的な見直し」の必要性があると発言している。

法案は今後上院の第3読会を経て、再度下院の審議へと戻される。テレーザ・メイ首相率いる内閣は、上院の修正案を元のかたちに戻す努力を払うことになるとみられる。

(木下裕之)

(英国)

ビジネス短信 6a6ba7467226bc8d