2017年の世界のLNG貿易は2桁増、中国の輸入が牽引

(世界、米国、中国)

米州課

2018年06月18日

2017年の世界の液化天然ガス(LNG)貿易量は天然ガス換算で3,934億立方メートルとなり、前年比10.3%増と2010年以来の伸びとなった。英国石油開発大手BPが6月13日に発表した2018年世界エネルギー統計(Statistical Review of World Energy 2018)で明らかになった。

LNG貿易の伸びを牽引したのはアジア諸国、とりわけ中国で、2017年中国のLNG輸入は526億立方メートルと前年の359億立方メートルから5割近く急増し、韓国(513億立方メートル)を抜き、日本(1,139億立方メートル)に次いで初めて世界2位のLNG輸入国になった。中国の天然ガスの消費量は米国とロシアに次ぎ世界3位だが、天然ガスの国内生産が需要の伸びに追い付いておらず、天然ガス消費量全体の約40%を輸入に依存している。こうした中で、国内の大気汚染改善のため石炭から天然ガスへの転換を進める中国政府の政策がLNGの輸入を押し上げた。

BPチーフエコノミストのスペンサー・デール氏は、中国のガス需要は2018年も増加が続く見通しだが、2017年のような急増は、2019年以降繰り返されることはないだろうとみている。その背景には、中国が天然ガスへのエネルギー転換を急いだものの、十分な天然ガスが確保できず、企業の生産活動に影響が出始めており、政府が再び石炭の使用を認めていることが挙げられる。

他方、2017年の世界のLNG輸出量は、カタール(1,034億立方メートル)、オーストラリア(759億立方メートル)、マレーシア(361億立方メートル)、ナイジェリア(278億立方メートル)、インドネシア(217億立方メートル)に続いて、米国からの輸出が174億立方メートルとなり、2016年の44億立方メートルから4倍に拡大した。アラスカ州を除く米国本土48州からのLNGの輸出は2016年に始まったばかり。中東、アジア、オーストラリア、ロシアなどからのLNGの輸出は原油価格にリンクして価格が決められ、仕向け先もあらかじめ決められている。これに対して、米国からの輸出は、米国天然ガス市場価格であるヘンリーハブに連動した価格設定が行われ、また仕向け先の制限がないため、近年ではアジア諸国からの調達が増加している。

2009年から2014年の間に米国やオーストラリアなどで多くのLNGプロジェクトが承認されたため、一時期LNGの供給余剰が懸念された。しかし、最近ではアジアからの根強い需要により、LNGの供給過剰感は解消し始めており、むしろプロジェクト建設の遅延により、先行きLNGが不足に転じ、価格上昇を懸念する向きもある。この点についてデール氏は、米国のようなLNG供給者の新規参入により、市況が流動化し、異なる産地からのガス価格が今後は徐々に収束していく可能性が高いとみている。

(木村誠)

(世界、米国、中国)

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