TN州の銅精錬工場が住民の抗議で閉鎖

(インド)

チェンナイ発

2018年06月06日

インド南部タミル・ナドゥ(TN)州南部トゥートゥックディ(ツチコリン)県で5月22日、英国資源大手ベダンタ・リソーシズのグループ会社スターライト・コッパーの銅精錬工場閉鎖を求める集会が暴動に発展した。一部暴徒化した参加者と警察が衝突し、2日間で13人が死亡、60人以上が負傷した(「タイムズ・オブ・インディア」紙5月26日)。

TN州政府は、22日中に4人以上の集会を周辺地域で規制することを決定し、23日にはトゥートゥックディ県を含む南部3県でのインターネットサービスを禁止。24日にはパラニスワミ州首相が同社工場の恒久的閉鎖を示唆することで事態の沈静化を図った。その後、27日には集会規制が解除され、現地は平静を取り戻している。

抗議活動から100日目の集会で一部暴徒化

今回の暴動の発端は、銅精錬工場が地下水を汚染していると主張する周辺住民が、2月12日に開始した抗議活動にさかのぼる。これに対し、スターライト・コッパー側は、2018年3月末で失効する工場の操業許可(CTO: Consent to Operate)更新を2月に申請し、加えて工場の拡張も計画していた。

その後、抗議活動は徐々に拡大。100日目に当たる5月22日の集会では、県庁舎への投石、バスの焼き打ちが行われるなど参加者が一部暴徒化し、警官隊との衝突で死傷者が出る事態となった。

TN州政府は、工場閉鎖を求める声の高まりを受け、5月28日に同社工場の「恒久的閉鎖」を命令、同日中に工場を封鎖した。これに対し、同社のラムナトゥ最高経営責任者(CEO)は、今回の暴動について、外部団体が地元住民を扇動したと批判。「当地から撤退することは選択肢になく、法的な解決を追求する」としている(「ザ・ヒンドゥー」紙5月25日)。

銅の価格上昇や供給不足が懸念

インド巻線製造業協会のスディル・クマル・アガルワル会長は、「スターライト・コッパーの銅精錬工場はインドの銅生産の多くを占めている。今後、インドは銅の輸入を強いられることとなり、(ビジネスの)見通しは良くない」(「ザ・ヒンドゥー」紙5月29日)とした。当地報道では、同社はインドの銅生産量の約40%を占めるという。銅はワイヤーやケーブルをはじめ家電製品などを中心に幅広く使われており、今後、国内での販売価格の上昇や供給不足が懸念されている。

(坂根良平)

(インド)

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